徐々に世の中に浸透しつつある、男性の育児休業。実際の取得率はいまだ6.16%(2018年度)にとどまるものの、政府でも「取得義務化」を訴える動きが出てくるなど、空気は確実に変わってきています。では、実際に育休を取得したパパたちは、家庭や仕事でどのような変化があったのでしょうか。一部の特別な“スーパーイクメン”ではない、普通のパパたちへのインタビューを通じて、社会の実相に迫ります。

育休を取った人
森勝正さん 会社員(イベント制作会社勤務)

家族構成:妻(フルタイムの会社員)、長男(5歳)、長女(1歳)

育休取得経験
1回目 妻の職場復帰と長男の保育園入園のタイミングで約2カ月
2回目 長女が産まれるタイミングで1年間

 横浜郊外で兼業農家を営む家庭で育った森勝正さんは、「実家で農作業や家事をするのは、もっぱら祖父母と母親でした。会社員の父親は休みの日しか家におらず、男性が家事をするという感覚は薄かった」といいます。しかし、森さん自身は結婚後に妻の妊娠が分かった時から育児休業制度の存在を意識して、関連省庁のWebサイトを見たり、自社の人事室に問い合わせたりして情報収集を始めたそうです。

「もっと子どもと関わりたい」と育休取得を決意

 「実際に子どもが生まれたらすごくかわいくて、自分ももっと育児に関わりたいという思いが強くなってきました。それに、出産後の妻を見ていると体調の面などでとても大変そうでした。妻をサポートしたいという思いもあって、自分が育休を取ることを検討し始めました」(森さん)

 現実に森さんが育休を取得し始めたのは、長男が生後11カ月の時です。3月生まれの長男は1歳の誕生日を迎えた後、4月から保育園に通えることが決まっていました。ところが、妻の育休期間は基本的に1年間。そのため森家は、「長男が保育園に入園する1カ月前に、妻の育児休業が終わってしまう」というピンチに陥りそうになりました。「そこで妻と交代で3月から私が育休に入り、4月に保育園に入って慣らし保育が終わるまでの2カ月間を補うことにしたんです」

 「『もっと子どもに関わりたい』と思って始めたことですが、実際に育休を取得してみたら当初の考えは甘かったですね」と、森さんは笑って振り返ります。「子どもはこちらの計画通りには動いてくれませんから、子育てをしていると“時間が奪われる”といった感覚に見舞われました。長男が生後11カ月というタイミングで育休に入ったので、離乳食は作らないといけないし、歩き始めの頃で手当たり次第になんでも口にモノを入れるし……と、もう大変です」

 妻は職場復帰していたので、育児に加えて家事もしなければなりません。森さんにとっては、「一番面倒だったのが“洗濯物を洗っては畳む”という無限ループでしたね」。思い通りにいかない育児、慣れない家事に追われる育休生活を送る中で、森さんの意識は大きく変わっていきました。