家事を「手伝う」感覚が抜けて、自分の役割と考えるように

育休とったらこうなった1
掃除・洗濯が「しなくても大丈夫」なものではなくなった

 もともと洋服や部屋の奇麗さにあまり頓着するタイプではなかった森さんは、「以前は妻が家事・育児に疲れつつもきっちり掃除をしている様子を見て『そこまでやらなくても大丈夫なんじゃないの?』と思っているところがありました。でも育休に入ったら、それは違うんだと分かりました。赤ちゃんが生まれるとどんどん洗濯物がたまるし、部屋もある程度は衛生的に保たないといけない。子どもを育てていくためにやらなくちゃいけないんだ、“しなくてもいい”では済まないんだと感じたんです」

 最初はしんどかった家事にも、だんだんと慣れていったといいます。「育休取得の前までは、妻がやっている家事を“手伝う”という感覚が抜けていなかったと思います。でも今は“自分からやらないといけないことなんだ”と思って、進んで動けるようになりました」

 家事と育児に忙しい生活を送る中で助かったのは、「長男が比較的よく寝るタイプだったことと、私が寝るとストレスを解消できる性格だということですね」と森さん。育休はなるべく自分も息子と一緒に寝てしまうことで、ストレスを軽減していたそうです。また、子どもの月齢が11カ月になっていたこともあり、「一緒にいるうちに、だんだんと意思疎通ができるようになっていったことも楽しみでした」。

育休とったらこうなった2
「引き継ぎしやすい仕事」を意識するようになった

 育休に入る前、森さんは都内のイベント制作会社セレスポで営業関係の部署に勤めていました。同社には以前から男性も利用できる育児休業制度がありましたが、実際に行動に移したのは森さんが初めて。育休を取ると知った同僚からは、「その仕事を引き継ぐのオレだよね?」「3月に大きな案件があるのに大丈夫?」などと驚きの声が上がったそうです。

 育休取得を意識し始めた森さんは、いかに引き継ぎしやすくするか考えながら仕事をするようにりました。「営業担当は顧客との関係を作ったり、自分を売り込んだりすることも仕事のうちです。そのため、以前は自分の仕事は自分が分かっていればいいという感覚でした。でも、そもそも勤務先の会社には各地に支社があって、転勤や異動の可能性だってあるわけです。育休があってもなくても、本来ほかの人にスムーズに仕事を引き継げる環境を作っておかないといけないんですよね」と森さん。社内での情報共有を心掛け、いわゆる「手離れの良い」状況になるように仕事を進めていきました。

 実は、森さんはちょうど育休を取る時期に大きな営業案件を抱えていました。「”育休を取って大丈夫だろうか”とも考えましたが、しっかり子どもの面倒を見る機会は人生でそう何度もあるものではありません。思い切って育休を取得することにしました」

森さんと息子さん、娘さん(森さん提供)
森さんと息子さん、娘さん(森さん提供)