徐々に世の中に浸透しつつある、男性の育児休業。実際の取得率はいまだ6.16%(2018年度)にとどまるものの、政府でも「取得義務化」を訴える動きが出てくるなど、空気は確実に変わってきています。では、実際に育休を取得したパパたちは、家庭や仕事でどのような変化があったのでしょうか。一部の特別な“スーパーイクメン”ではない、普通のパパたちへのインタビューを通じて、社会の実相に迫ります。

育休を取った人
橘信吾さん IT関連企業 マーケティング・プロモーション関連業務

家族構成:妻 フルタイムの会社員、長男(8歳)、次男(6歳) 

育休取得経験
長男誕生時1年(2011年)、次男誕生時2カ月(2014年)、妻復職後4カ月(2014年~15年)

親の反対に傷つき、落ち込む

 青森県で生まれ、両親から「男は稼いでなんぼ」「ちゃんとした企業に勤め、稼ぐために、しっかり勉強しろ」とたたき込まれたという橘さん。会社では残業に明け暮れる日々でした。

 「家と会社の往復だけで、外部との交流などインプットもなく、何かに追われている感じ。肉体的にも、精神的にもきつい日々でした。まだ若かったから耐えることができましたが、この働き方をあと10年、20年と続けるのは無理だと感じていました」と振り返ります。

 そんな中、妻が妊娠していることが分かりました。育休を取得すれば、自分や家族と向き合う時間が持て、働き方や生き方についても考えることができると思い、取得を決意しました。

 男性が育休を取得するに当たって障壁になることが多いといわれる「会社」。「妻」からの反対も少なくないとされ、橘さんも反対される覚悟で切り出したそうですが、どちらも反応は良好。拍子抜けするほどにすんなりと取得に至ったといいます。しかし、意外なところに大きな壁が待っていました。

 それは、両親でした。訪れたパパセミナーの縁で、ある新聞社から取材を受けたら、たまたま故郷、青森の新聞に掲載されたのです。それを目にした父親からすぐに連絡が入り、こう言われたのです。

育休取ったらこうなった1
両親からの猛反発。育休の話題は両親との間でタブーに

 「子どもが生まれて、お金がかかるというのに、会社を休むとはなにごとか」「お前なんか家にいても、育児の邪魔だ。妻に任せておいた方がいい」「出世できなくなる。リストラにあう」「働かざる者食うべからず」

 両親から毎日のように続く猛反対の電話攻撃。橘さんは、傷つき、落ち込んだそうです。ただ、育休の取得を、人生をかけた壮大な計画だと捉えていた橘さんは、初心を貫き、予定通り育休を取得しました。

 「その後、両親と育休について、語り合ったことはなく、いまだにこのことは、わが家のタブーとなっています。実は次男のときの育休についても、話していませんし、両親がどう思っているかは、全く分かりません。ただ、孫はかわいいようで、孫との交流は活発です」

 無事育休が始まったものの、新しい悩みに直面します。孤独感です。

橘さん一家(写真は橘さん提供)
橘さん一家(写真は橘さん提供)