平日昼間の孤独感、公園には女性しかいない…

 「育休中、子どもを連れて平日の昼間に出かけたときに、とにかく街に同世代の男性がいないことに気づき驚きました。考えてみれば、20代から50代の男性の多くは仕事へ行っている時間帯ですから。そして、それほど男性がいない中で、近所をウロチョロしていると何とも目立つ存在であり、居心地が悪いものなんです」

 子育て施設に足を踏み入れてみると、そこはたいてい女性しかいませんでした。橘さんが入っていくと、それまで和気あいあいとした雰囲気が一変し、緊張感が張り詰め、好奇な目にさらされている気になりました。

 「当時は『怪しそうな男に見えますが、皆様の団らんの場を壊しに来たわけでなく、リストラされたわけではなく、単に子どもと一緒に過ごしたいと思い育休を取得した、イクメンってやつなんです。ごめんなさい。どうかお気になさらずに仲良くしてやってください』と心の中でなぜか平謝りしていました」

 またもや想定外の壁に直面した橘さん。さらなる追い打ちをかけたのが、会社に行かなくなったことで感じた孤独です。

育休取ったらこうなった2
男性で子育てをしている人が少なく、強い孤独を感じた。パパ友のありがたみを実感

 「休む前は、心のどこかで『会社を休めてラッキー』なんて思っていましたが、実は『会社』という大きな仕組みを通してのみ『社会』とつながっている部分が多く、その『会社』を離れるということで『社会』から離れるという感覚になってしまったのです」

 会社で仕事をしていれば、何をすればいいか指揮し相談に乗ってくれる上司がいます。育休中は、当然上司などおらず、自分で決め、行動するしかなく、最初は戸惑いばかりだったと言います。

 家事育児の大変さとは違うところで追い詰められていく中で支えになったのが、同じような境遇のパパ友たちでした。

 家にいると孤独を感じてしまうので、妻と協力して時間をつくり、積極的に子育てやパパに関連したセミナーに参加したり、NPOの活動に関わったりするようになると、パパ友たちと知り合うことができたといいます。

 「中にはセミナー会場で同じように育休中の人に出会うこともありました。やはり同じような環境で過ごしていたり、その経験をしたことがある先輩たちに出会ったりしたことで、思いを共有できたり、分かってもらえたりすることもあるので孤独感は軽くなりました」

 パパ友は、会社の同僚でもなく、学生時代の友達でもなく、社会人になってからできた友達ともまた違う不思議な存在だと橘さん。

 「仕事抜きで付き合うことができて、しかも、皆さんビジネスマンなので多くの刺激を得ることもでき、貴重な存在なのです。息子たちが巣立っても仲良くしていきたいと思います」

パパ友の存在に橘さんは救われた(写真は橘さん提供)
パパ友の存在に橘さんは救われた(写真は橘さん提供)