徐々に世の中に浸透しつつある、男性の育児休業。実際の取得率はいまだ6.16%(2018年度)にとどまるものの、政府でも「取得義務化」を訴える動きが出てくるなど、空気は確実に変わってきています。では、実際に育休を取得したパパたちは、家庭や仕事でどのような変化があったのでしょうか。一部の特別な“スーパーイクメン”ではない、普通のパパたちへのインタビューを通じて、社会の実相に迫ります。

育休を取った人
田形勇輔さん 製薬会社の研究開発職

家族構成:妻 フルタイムの会社員、長女(4歳)

育休取得経験
長女の誕生直後に2週間と、1歳8カ月時に1カ月

NICUで子育ての大変さを知る、「一人では無理」

 製薬会社の研究部門に勤める田形勇輔さん。妻の妊娠が分かったのは2014年ごろでした。当時はすでに「イクメン」の存在がメディアで多く取り上げられるようになっており、育児に積極的な男性が社会で存在感を増している時期でした。田形さんも妻の妊娠を知ったときには「人生経験になりそうだし、取ってみるか」と、前向きに育休の取得を決めたそうです。

 勤め先の会社でも特に反対されることなく、すんなりと育休への道筋ができました。「ただ、先輩の男性社員たちからの反応にはちょっと引っかかりを覚えましたね」と田形さんは振り返ります。「『(男性が)育休取って何するの?』とか『リフレッシュしてきてね』と言われたんです。育休は自分が休むための制度じゃないのに」。メディアで男性の育休取得が取り上げられる機会は増えつつあったものの、「企業の現場では、男性育休に対しての理解はまだまだ低いんだなと感じました」。

育休取ったらこうなった1
子育ては妻との共同作業。一人ではできないと実感する

 育休に入る直前、田形さん一家は試練に直面します。妻の出産予定日を3週間後に控えた2015年8月。妻が検査のために病院に行ったところ、陣痛が発生。そのまま女の子を出産することになりました。子どもは1830gの低出生体重児で、新生児特定集中治療室(NICU)に入院となりました。

 出産直後で体力的にも精神的にも弱った妻を支えるべく、田形さんは妻の病室に寝泊まりすることにしました。病院では子どもへの3時間おきの授乳に加え、身の回りの世話や妻のケアなど、休む暇は一切ありません。それでも、2週間もたつと子どもは順調に発育し、2300gを越えて無事に退院することができました。

 「妻の病室のソファで寝て、タイマーが鳴ったら眠い目をこすりながらNICUに行く毎日でした。あの2週間は今思い出しても本当に大変でしたね。ただ、大変だけどそれを体験したことで、家族の大事さを改めて感じました。子育ては一人でするものではないし、できない。妻と協力して二人でやっていくものなんだとも実感しました

田形さんの家族(写真は田形さん提供)
田形さんの家族(写真は田形さん提供)