大事なのは多様性 地域の自治会へのコミットは人それぞれ

育休取ったらこうなった3
まさかの自治会長に推薦された

 田形さんの地域での活躍には家族もビックリ。さらに積極的に取り組もうとしていた頃、自治会長にならないかと声がかかりました。得意のバーベキューを通して積極的に地域の輪を作ろうとする田形さんの人柄に、多くの人が引かれたのがその理由です。

 「30代にして自治会長というのは聞いたことがなかったのでビックリしました。でも、自分が自治会の会長になれば、娘が育つこの地域をもっともっといい場所にできると思いました。こんな若い世代に任せてくれたのですから、気合も入ります」

 すでに夏祭りのバーベキューで集まってくれたボランティアの人たちをはじめ幅広い世代の人たちとつながってきた田形さん。ただ、世代も違えば、価値観も違う人たちが集まるのが自治会です。運営面には細心の注意を払っていると言います。田形さんが最も意識しているのが、自治会に参加する人の「多様性」だそうです。

 「自治会に100%の力を注ぐ人もいれば、50%の人も10%の人もいます。でもそれぞれみんなが正しいと思います。イベントに来たり、運営したりするだけでなくいろいろな関わり方もあります。同じようなタイプの家庭が多かったかつてとは違って、それぞれの家庭の状況が違うことを浸透させることが大事だと思っています」

 暮らし方が変わりつつある過渡期だからこそ、昔ながらの自治会運営が難しくなっている地域が多いと聞きます。田形さんが目指すのは、今の時代に合った新しい自治会の在り方を探ること。取り組みを通じて、今は自治会など地域のことにあまり積極的ではない世代も興味を持ってくれるのではと思っています。

 「みんなが無理せずできる範囲で参加して、街への貢献に心地良さを感じながら愛着を育んでいくようなタウンマネジメントを目指しています。うちの自治会ではこうしたマネジメント手法を『自治会レボリューション』と呼んでいます。これをもっと進めていけば、自分が楽しめるだけでなく、子どもたちが育っていくこの地域をよりすてきな場所にしていけるはずです」

地域の祭りの様子(写真は田形さん提供)
地域の祭りの様子(写真は田形さん提供)
インタビューを終えて、筆者のまとめ

いろいろな育休経験者を取材してきましたが、育休がきっかけとなり、子育てだけでなく「街育て」にまで関わるようになった変わりようには驚きました。そして田形さん自身も、この変化については想像もしていなかったはずです。地域のつながりが見直されている今だからこそ、育休取得者が増えて地域が盛り上がる可能性に期待したいと思います。

取材・文/杉山錠士