育休開始1カ月で妻が入院 ワンオペのピンチを乗り切る

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妻の入院中にも、問題なくワンオペできた

 育休開始から1カ月がたった頃、羽田夫妻にピンチが訪れました。妻に悪性の腫瘍が見つかったのです。幸い早期の発見だったため治療できると分かったそうですが、手術に伴って入院が必要でした。つまり、その間はパパだけでワンオペをしなければいけないのです。

 「手術までは1カ月ほどあったため、その間にいろいろな準備を進めました。まず、当初は娘を母乳で育てていたんですが、市販の粉ミルク併用に切り替えました。また、妻と協力していた娘のお風呂も、一人で全部できるようにしました。特にお風呂が大変でしたね。でも、なんとか慣れていきました」

 妻の入院中は、妻の母にサポートを頼みつつも、羽田さんと娘が二人で過ごす時間が増えたといいます。「ママ不在で娘が泣いたりしないか心配でしたが、案外、大きく困ることはありませんでした。二人で過ごす時間が長くなると、娘が何をしてほしがっているのか、読み取りやすくなりました。オムツを替えてほしい、ミルクが欲しいと顔で訴えてくるんです。一緒に遊ぶと笑ってくれるのが楽しくて、娘との距離が近づいたと思います。一方で、妻は大変だったと思います。手術の不安に加え、入院中は生まれてから毎日一緒に過ごしてきた娘と会えませんから」。手術は問題なく終わり、入院は5日間で済みました。それ以降、羽田さんは妻と娘をさらに大切に思うようになったといいます。

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仕事にメリハリをつけられるようになった

 羽田さんは育休を取得したことで、職場復帰後の仕事に対する考え方も変わったといいます。「まず、育休中にしっかりと子育てを経験したことで、保護者に対する見方が変わりました。この年齢になるまで子どもたちを育ててきたんだと思うと、『本当に保護者の皆さんはすごい』と純粋に尊敬できる存在になったんです」

 そのほか、働き方にも大きな変化がありました。「以前は、なんとしても仕事を最後までやりきろうと思っていました。それが残業につながったり、健康面にも良くなかったりした部分があったと思います。今は無理をしなくなり、しかもそのほうが結果的に仕事の質が上がると気付きました。早く帰る分、朝早く学校に行っています。仕事が終わりきらずに終業時間が来てしまっても、無理に当日中に済ませることはやめました。一晩寝かして、翌朝改めて集中できる環境で取り組むほうが、前日の仕事を冷静に見直しながら仕上げられます。そのほうが疲れもたまりにくいですしね。育休は仕事の面でもプラスになるとはよく聞きますが、『本当にその通りだな』と実感しました」

 羽田さんは育休について「損したことは何もありませんでしたね」と振り返ります。「育休は生活面・金銭面・仕事面すべてにおいてプラス方向に働きました。妻や娘とのつながりも一層深くなって、これまでの人生で最高に幸せな3カ月半でした」といいます。現在は第2子の出産を控えていて、また仕事との兼ね合いで時期を選びつつ、育休の取得を考えているそうです。

羽田さんの娘さん(写真は羽田さん提供)
羽田さんの娘さん(写真は羽田さん提供)
インタビューを終えて、筆者のまとめ

これまで小学校教諭の育休について詳しく聞く機会がなかったので、とても興味深いお話でした。「学期」単位での育休取得や、保護者についての見方が変わったところなど「学校の先生ならでは」の経験談を聞くと、育休取得によって得られる視野の広がりにも、職業に応じて違いがあると分かります。次の育休では刺し身の調理技術を高めることができるのか、楽しみですね!

取材・文/杉山錠士