徐々に世の中に浸透しつつある、男性の育児休業。実際の取得率はいまだ6.16%(2018年度)にとどまるものの、政府でも「取得義務化」を訴える動きが出てくるなど、空気は確実に変わってきています。では、実際に育休を取得したパパたちは、家庭や仕事でどのような変化があったのでしょうか。一部の特別な“スーパーイクメン”ではない、普通のパパたちへのインタビューを通じて、社会の実相に迫ります。

育休を取った人
藤田理さん 会社員(ITベンチャー勤務)

家族構成:妻(第2子誕生の1年半前までフルタイムの会社員。それ以降は主婦)、長女(5歳)、次女(2カ月)

育休取得経験
次女の誕生から1カ月

 ITベンチャーの会社員として勤務しながら、妻と二人で娘(長女)を育てていた藤田理さん。長めに育休を取得していた妻が、長女の誕生から2年たって仕事に復帰することになりました。「家族は大変なことをシェアするもの」という考えに基づいて以前から子育てを分担してきた藤田さんですが、妻の復帰をきっかけにいっそう長女と関わる時間が増えたといいます。例えば妻の通勤に2時間かかる環境だったため、長女の着替えなど朝の支度と、保育園への送りは藤田さんの担当になりました。

 その頃の育児を、「長女と接する時間が増えて、子どもは親の影響で日々変わっていくことを実感しました。子どもってとにかく純粋で、ものの見方にバイアスがかかっていないんですよね。親が説明したことをみるみる吸収していく。こちらが何を伝えるかで子どもの考え方も変わるので、育てていくことに覚悟が必要だと感じました」と藤田さんは振り返ります。次第に、「育児は子どもの成長を実感できる貴重な時間だ」と感じるようになりました。

第2子出産前、妻の提案で育休の取得を検討

 やがて、妻が第2子を妊娠しました。妻が仕事を辞めたタイミングで、長女は保育園から幼稚園に移っていました。「この頃、実家に長女を預けて、5年ぶりにゆっくり時間を取って妻と二人で食事をする機会をつくりました。2人目が生まれて忙しくなる前に『人生の棚卸し』をするというか、夫婦ともに今後やりたいことや育休のこと、家庭の運用の仕方などを改めてちゃんと話し合っておきたかったんです」と藤田さん。そのときに妻から打診があったのが、「藤田さんの育児休業取得」でした。

 「長女のときには育休取得は考えたこともなかった」という藤田さんですが、妻の提案に少し驚きつつも前向きに検討することにしました。「知人から、2人目が生まれたときにかかる労力は2倍どころではなく3倍という話を聞いていました。さらに、妻は里帰り出産をしたいと言っていたんです。そうなると出産のタイミングから考えて、長女が幼稚園のお遊戯会にきちんと参加できないかもしれません。長女はお遊戯会を楽しみにしていたので、それは避けたいと思いました」