花まる学習会代表の高濱正伸さんと中学受験プロ家庭教師の西村則康さんに、今の子育てについて感じることを3回にわたってお伝えする特別対談。最終回は、不安やストレスを感じがちな、ウィズコロナ時代の子育てについて聞きました。

(1) 幼児期に好きなこと好きなだけ 頭フル回転の場面作る
(2) 中学受験 親にできるのは笑顔で子の意欲高めること
(3) 先が見えない時代 大人も子どもも変化を恐れない ←今回はココ

じっくり考えられる子は伸びる

日経DUAL編集部(以下――) 今年は新型コロナの影響で、教育現場は大変混乱したと聞きます。自粛中は多くの塾がオンライン授業で対応したようですが、お二人はどう指導されたのでしょうか?

高濱正伸さん(以下、敬称略) うち(花まる学習会)は比較的早く対応ができたと思います。3月初めに『タカハマチャンネル』を作ってYouTubeで配信してみたら、予想以上の反応で手応えを感じました。4月からは学年ごとに「花まるオンライン」の配信をスタート。新しい取り組みでしたが、若手スタッフの力で柔軟に対応できました。

西村則康さん(以下、敬称略) 私もZoomを使ってのオンラインの指導を行いました。はじめは不安がありましたが、やってみたら楽しいし、今後も活用できると実感しました。学びの可能性が広がったと思います。

 ただ、大手進学塾の一斉授業は難しかったのではないでしょうか。子どもの学力レベルにかかわらず、全学年で同じ動画授業を配信していた塾がありましたが、成績上位の子にとっては物足りないし、下位の子にとってはフォロー不足な内容でした。

 けれども、動画授業のいいところは、好きな時間に何度も見ることができる点です。日ごろ、塾の授業のスピードについて行けない子には、「自分のペースで学習ができた」というメリットがあったと思います。また、成績上位の子の中でも、詰め込み授業でなくなった分、自分の頭でじっくり考えるようになった子がいます。そういう子はこれからますます伸びていくでしょう。しかし、そうした子どもの学びのペースは、親御さんの関わり方で左右されます。

高濱 そうですね、どのように子どもに関わるか、というのはとても大きいです。コロナ休校があったりリモートワークが広がったりで、親子が過ごす時間は増えていますからね。

西村 ウィズコロナの時代は、子どもの勉強面を含めてうまくいっている家庭とうまくいっていない家庭の二極化が起きていると思いますね。

―― うまくいっている家庭・いっていない家庭のどちらが増えていると感じますか?

高濱 正確なところはデータがないので分かりません。しかし私は、うまくいっていない家庭の方が多いという印象があります。親のストレスがたまると、子どももストレスがたまる。結果、親子関係がギクシャクしてしまっているケースが多そうです。

西村 コロナ休校のときは親子ともにストレスを感じたと思います。中学受験生の親御さんは、今も、例年とは異なる状況に大きな不安を抱えています。

 不安を解消するために、子どもに勉強をたくさんさせている親御さんが見られますね。コロナ休校中は、中学受験生の勉強時間は、小学校が休みだった分、むしろ増えていたのではないでしょうか。

 ところが、夏前や夏休み明けの模試で成績が下がってしまう。親御さんが「今日はこれをやりなさい、あれをやりなさい!」と段取りをして子どもに勉強をさせただけで、子ども自身がじっくり考える勉強ができていなかったからだと思います。

 先ほど、上位クラスの子で成績が伸びた子がいたと話しましたが、そういう子は、勉強量ではなく勉強の質を大切にした結果でしょう。塾の授業は時間が限られているので、すぐに解説に入ってしまうけれど、家ではじっくり考えることができます。そうやって自分で考えてきた子は大きく伸びたと思います。

高濱 考える子は、授業中に先生が解説をしようとすると、「ちょっと待って! あと少しで答えが分かりそうだから!」と自分で答えを出そうと粘りを見せますね。それは、考える快感を知っているからです。土台にあるのが1回目でお話しした「幼少期の遊びで培った熱中力」です。自分で考えることは楽しいと知っている。だから、やらされる勉強はつまらなく感じるのです。

「子どもの勉強面を含めてうまくいっている家庭とうまくいっていない家庭の二極化が起きていると思いますね」(西村さん)
「子どもの勉強面を含めてうまくいっている家庭とうまくいっていない家庭の二極化が起きていると思いますね」(西村さん)

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