毎日ちょっとでも、子どもにとってうれしい言葉をかけて

―― では、中学受験の勉強を進めていく上で大事なことは何でしょうか?

西村 それは子どもに気持ちよく勉強させることだと思います。中学受験をするのだから「勉強するのは当たり前」ではなく、頑張っているお子さんを認め、ねぎらい、褒めてあげてほしいのです。

 考えてもみてください。遊びたい盛りの小学生の子どもが、週の半分以上塾に通い、家でも毎日勉強しているのです。それだけでもすごいことだと思いませんか? 親御さんが小学生のとき、これと同じことができたでしょうか? そうやって、子どもの立場に立って想像力を働かせてみると、おのずとかける言葉も変わってきます。中学受験における親の一番の役割は、子どものモチベーションを高めることだと思います。

高濱 その通りです! まさに「中学受験における親の一番の役割は、子どものモチベーションを高めること」なんですよ! 子どものやる気が高まるような言葉をどんどんかけてあげればいい。

西村 中学受験の勉強は約3年間と、小学生にとってはとてつもなく長い期間、準備をしなければなりません。それを頑張り続けるには、親御さんの励ましなしではできません。毎日ちょっとでもいいから、子どもにとってうれしい言葉をかけてほしい。

 よく親御さんは「○○しないと、○○になるよ」「あなたは○○だから、○○なのよ」と否定の言葉を投げてしまいがちです。アドバイスをするにしても、一度欠点を指摘してから修正点を提示する。それが子どもを傷つけていることに気づいていない。

 でも、同じアドバイスをするにしても、「あとちょっと○○したら、○○になりそうだね」と子どもに小さな成功を予感させるような言葉を伝えてあげれば、子どもは素直に耳を傾け、「これを頑張ればなんとかなるかもしれない」と前向きに捉え、頑張ります。

高濱 そのときに大事なのは表情です。先にも言いましたが、親御さんがいつも笑顔でいてくれれば、子どもの心は安定します。小学生の子どもにとって大きな挑戦となる中学受験に必要なのは、この絶対的な安心感です。それは幼少期に親に見守られながら、好きな遊びにとことん熱中できたあの感覚と同じです。子どもが何か大きなことに挑戦するときには、親御さんの笑顔が不可欠なのです。

取材・文/石渡真由美 写真/稲垣純也


高濱正伸
花まる学習会代表
NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長

高濱正伸 熊本県立熊本高校卒業後、東京大学に入学。1990年同大学院修士課程修了後、1993年に「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を重視した、小学校低学年向けの学習塾「花まる学習会」を設立。算数オリンピック作問委員。『考える力がつく算数脳パズル 図形なぞぺー《小学1年~3年》』(草思社)、『マンガでわかる! 10才までに遊んできたえる算数脳めいろ260』(永岡書店)など著書・監修書籍多数。

西村則康
西村則康 プロ家庭教師・名門指導会代表、中学受験情報局主任相談員、塾ソムリエ。受験学習を、暗記や単なる作業だけのものにせず、「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で切り込んでいく授業は親からの信頼も厚い。『御三家・灘中合格率日本一の家庭教師が教える 頭のいい子の育て方』(アスコム)、『中学受験は親が9割 最新版』(青春出版社)、『難関校合格のすごい勉強習慣』(日本能率協会マネジメントセンター)など著書多数。