「モンテッソーリ 久我山こどもの家」の教師である石田登喜恵さんに、3~6歳児を持つ親に向けて、家庭で実践できるモンテッソーリ教育のエッセンスを教えてもらう本連載。今回は、子どもの行動を見極め、していい、ダメを伝えるときに大切なことや、子どもが甘えてきたときの対応についてお伺いしました。

【1回目】モンテッソーリ教育 3~6歳は本物の自然体験を豊かに
【2回目】家庭モンテッソーリ教育 「1人でできた」の工夫を
【3回目】保育園ではできるのに「ママやって」 甘えさせていい? ←今回はココ

していい、ダメの見極めは家庭の価値観が大切

日経xwoman DUAL(以下、略)―― モンテッソーリ教育では子どもが自ら選択し、「1人でできた」と思える経験を増やすことが大事だと、お聞きしてきました。ただ、子どもとの生活の中では、大人として「これはしてほしくない」と思う場面が多くあります。「水や食べもので遊んで無駄にする」「公園で遊んでいるときに家に帰りたがらない」などですね。やりたい気持ちを優先させるのか、無理にでもやめさせるほうがいいのか、その見極め方はどのように考えたらよいのでしょうか。

石田登喜恵さん(以下、石田) OK/NGの見極め方は両親、家庭の考え方や価値観によります。自分たちの価値観と照らし合わせて、ルールを決める必要があるでしょう。

 ただ、子どもの気持ちを優先させるといっても、なんでもやっていいわけではありません。道を渡りたくても、赤信号であれば横断してはいけませんよね。自由の中にも必ず「してはいけないことがある」ということは必ず子どもたちに伝えていかなくてはなりません

 モンテッソーリ教育の環境の中でも「やってはいけないこと」、つまり大人の介入が必要なことがあります。「他人を傷つける行為」「破壊的な行為」です。大人が注意深く子どもを見て、これらの行為が行われていた場合「それはしません」とはっきりと伝え、やめさせるようにします。

親に一貫性がないと子どもが混乱してしまう

石田 普段の生活の中でも、マナー違反になる行為は、はっきりと「それはしません」と伝えます。例えば子どもが机に上って遊びだしたら、「お机には上りません」と伝えて下ろします。「公共の場で走らない、騒がない」もそうですね。大切なのは「ダメなものはダメ」という姿勢に一貫性を持たせることです。「きのうはダメだったことがきょうは特別にいい」では、子どもが混乱してしまいます。

―― 本当にダメなことには、毅然とした態度で接する。それ以外の親としてはできればやめてほしいような行為、例えば、水を出しっぱなしにして遊ぶ、家の中で走り回るなどは、家庭の中でルールを決めて、伝えていくのですね。

石田 ルールを決めた上で、子どもには「水は使い終わったら止めます」などと、具体的なアクションとして伝えるといいですね。「流しっぱなしはもったいないよ」と抽象的に伝えると、子どもはピンときません。「小川の水がなくなっちゃうからだよ」などと、子どもがイメージしやすい表現で伝えましょう。