子育てには迷いがつきものです。さまざまな情報を耳にする中で、「モンテッソーリ教育」に興味を持っている人も多いのではないでしょうか。アンネ・フランク(敬称略、以下同)やGoogle創業者であるラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、Amazonの創業者のジェフ・ベゾス、オバマ元大統領、そして日本では藤井聡太棋士が受けた教育法として、話題になったモンテッソーリ教育。20世紀初めから今に至るまで、100年以上も世界中で実践されている教育法です。本連載では「モンテッソーリ 久我山こどもの家」の教師である石田登喜恵さんに、3~6歳児を持つ親に向けて、家庭で実践できるモンテッソーリ教育のエッセンスを教えてもらいます。今回は、モンテッソーリ教育の基本的な考え方について聞きました。

子どもは球根。タイミングと環境が合えば自分で成長していく

日経xwoman DUAL(以下、略)―― モンテッソーリ教育とは、どのような教育法なのでしょうか?

石田登喜恵さん(以下、石田) モンテッソーリ教育は、イタリア初の女性医師であるマリア・モンテッソーリによって確立された教育法です。マリア・モンテッソーリは子どもたちを観察する中で、「適切な時期に適切な環境を与えることで、子どもたちは自ら生まれ持った生命力を成長させることができる」と発見しました。

 モンテッソーリ教育では、子どもの成長を球根に例えることがあります。球根はもともとその中に、さまざまな色や形、香り等の可能性を持っています。その球根を適切な時期に栄養のある土に植え、水やりをすることで、やがて芽を出し花を咲かせます。しかし、植える時期が悪かったり、土に栄養がなかったり、水が足りない・あるいはあげすぎたりすると、うまく育つことができません。

 これと同じように、子どもも適切な時に適切な環境に身を置けば自分の持っているものを自ら成長させることができます。モンテッソーリでは子どもの成長をこのように考えます。

大人の役割は子どものしたい事を一人でできるように手伝うこと

―― モンテッソーリ教育を行う保育園や幼稚園は、どのような特徴があるのでしょうか。

石田 園によっても違いがありますが、モンテッソーリ園の大きな特徴は「こどもが主」であることです。子どもがやりたい事を自分で選ぶことができます。

―― 例えばどのようなことでしょうか。

石田 モンテッソーリ園では、個々の子どもの成長に合ったさまざまな教具、教材があります。数や言語、五感を洗練させる感覚教具、洗濯や掃除などの日常生活に関わるものまで、さまざまな教具、教材が準備されています。

 子どもたちは登園すると、棚から自分でやりたい活動を選び、取り組みます。この活動をモンテッソーリ教育では「お仕事」と呼んでいます。どのお仕事をするかは、子どもが選択をします。

 子どもたちは、満足するまで何度も繰り返して「お仕事」に取り組めます。モンテッソーリ教師は、子どもがお仕事に集中できるよう見守り、「子どもが集中して取り組み、繰り返してできること」を大切にしています

写真提供/久我山こどもの家
写真提供/久我山こどもの家