IT分野のイベントを企画、運営するウィズグループの最高経営責任者(CEO)で、現在21歳の娘がいるベテランママでもある奥田浩美さん。本連載では、多くの働く女性をエンパワーメントしてきた奥田さんに、キャリアや子育てのヒントをもらいます。最終回となる今回は、これからの時代に「才能を生かしていける人」と奥田さんが考える、「好奇心に沿って行動できる子ども」の育て方について聞きました。

変化の激しい時代、生き残れるのは「好奇心に沿って行動する人」

 今後の変化の激しい時代に「生き残っていける人」は、新しいものを面白がり、今あるものの見方を変えていける人だと思っています。数年単位で多くの仕事のあり方が入れ替わっていくような時代には、好奇心と自らの「欲求」に沿って行動できることが最も重要です。

 それには、「これはダメ」「これはありえない」と親によってせばめられてきた範囲を、自ら広げていけることが大切です。親としてはまず、子どもの好奇心から発せられた行動を否定することなく、そのままやらせてあげることだと思います。

 口で言うのは簡単ですが、そうした子育ては、本当にめんどくさいし手がかかります。例えば幼児であれば、保育園の帰りに水たまりに寝転んで服をドロドロに汚しても、「そんなことして!」と怒らず、「どうしてそこで寝転んでいるの?」「そこから何が見える?」と質問し、子どもの興味や関心に寄り添う必要があるからです。

愛情という名のもとに、娘を振り回してきた自覚はある

 今、娘は21歳ですが、私自身を振り返って、そうした子育てをしてきたかというと、まったくそんなことはありません。親と子であっても感性が異なりますから、寄り添えないことの連続でした。

 娘が生まれて以来、私たちは、親子というより師弟に近い関係性でした。子ども扱いすることなく、出張の多い私が出かける際には、一通りの理由を説明したら、「あとは、あなたもあなたらしく過ごしていてね」と伝えて出かけていきます。「申し訳ない」と思ったことはなく、親がしっかりしていればきっと背中を見ていてくれると、娘の存在にあまり振り回されることのない母親だったかもしれません。

 一方、自分の子育てを振り返ると、愛情という名のもとに、娘を振り回してきた自覚はあって、例えば、早くから娘に、アントレプレナーシップ(起業家精神)を感じられる環境に身を置いてほしいと、自宅を売って起業家が集まる地域に引っ越したり、中学では逆に、自分たちのような自由だけれど偏った人間ばかり見て育ってはいけないと、日本一校則が厳しいといわれるミッション系の私立への入学を勧めたり……。娘からすると、ほんと余計なお世話ですよね。

 当時は、私が良いと思う環境を作っていくのだと努力していましたが、その一方で、娘が「自分はこうしたい!」と言ってきたら、私主導で娘を振り回すのは、もうやめようとも思っていました。私が娘を「弟子」にするのは勝手ですが、娘は「師匠」を選べませんから。

 結果として、娘が疑問を持つタイミングは、高校生のときにやってきました。「本当にこの『師匠』に振り回されていいのか?」という問いを持ち始めたのだと思います。