学年が上がるにつれて就寝時間が遅くなってきた、塾や習い事で帰りが遅くなり、寝る時間も後ろ倒しになっている……などと子どもの睡眠に関して、悩んでいないでしょうか。実は日本の子どもたちは世界的に見ても最も睡眠時間が短いそうです。睡眠不足でどのような弊害が起きるのか、国立国際医療研究センター国府台(こうのだい)病院児童精神科診療科長、子どものこころ総合診療センター長の宇佐美政英さんに聞きました。

日本の子どもは幼児期から睡眠時間が少ない

 共働きで忙しく、終業時間が遅いと子どもの寝かしつけにも影響してしまう、大きくなるにつれて夜更かしになってきた──などと、子どもの睡眠時間が短いことについて悩んでいないでしょうか。実は「日本の子どもは世界的に見ても、睡眠時間が少ないのです」と、宇佐美政英さんは警鐘を鳴らします。

 「日本の3歳以下の子どもの睡眠時間が世界で最も短いことを示した研究結果もあります。学校教育総合研究所の調査でも小学1年生で11時以降に寝る子どもが一定数いることが分かっており、どの学年でも望ましいとされる睡眠時間を下回っています」(学校教育総合研究所 白書シリーズWeb版「小学生白書」2021から)

 子どもにとって望ましい睡眠時間は新生児で14~17時間、乳児で12~15時間、幼児で10~14時間、学童期で9~11時間、青年期で8~10時間とされています。十分な睡眠時間が取れていないと、成長の遅れ、食欲不振、集中力や注意力の低下、将来の肥満に関係します。集中力、注意力が低下すれば学力にも悪影響を与えます。

 「子どもが日中に眠気を感じている、移動中に車や電車の中ですぐ寝てしまうという場合は、睡眠不足が考えられますので十分に睡眠を取るようにしてください。大人であれば仕事中にデスクで10分程度の仮眠を取る、といったこともできますが、子どもたちは学校で授業を受けているため、それも難しいでしょう。寝不足でイライラして、友達とトラブルを起こすことも心配です。

 また、特に気をつけたいのは寝不足が原因で起こる集中力・注意力の低下をADHD(注意欠陥多動性障害)だと間違って診断してしまうことがあることです。中にはへんとう腺が大きいためにいびきをかき、眠りが浅かった子がへんとう腺を取る手術を受けたらよく眠れるようになり、多動が落ち着いたという例もあります」

 「休日に子どもがなかなか起きてこない」という場合は、「その子にとって、本来はそのくらいの睡眠時間が必要」ということのようです