登園すると他のクラスの、名前もまだ知らない先生たちも笑顔で近づいてきて、「R君のお母さん? くま組の○○です、R君お部屋に入れてよかったわね」などと話しかけてくれます。さらに、すれ違う保護者らしき人たちまで、ニコニコの笑顔で「おはようございます!」と挨拶してくれる。

 そういう環境に慣れていなかったわたしは、腹から声出していこー!ともう一人の自分にツッコまれるほどか細い声で、うつむきがちにしか返事ができないのですが、みんながウエルカムな態度で接してくれ、わたしの自発的な参加を待ってくれていることはビンビン伝わってくるのでした。そうして1年後、わたしは自分がされたのと同じことを、新しくきたお母さんたちにできるようになっていました。

親を孤立させないことが子どもの幸せを守る

 H保育園の保護者は一人残らず、毎年なにかしらの役員をしなければなりません。それから、平日がお休みになった場合には子どもを休ませるのではなく、親も登園して「保育参加」してくださいという、珍しい方針をとっていました

 こういう伝統に、え、それじゃなくても疲れてるのに……と最初は思ったものです。確かに、委員会のため月に1、2度は土曜が潰れ、休みの日の早起きも面倒でした。でも、そうした活動を通じて他のお母さんや先生がたと親しくなることで、子どもと二人きりで過ごすよりも楽しく、ラクな休日を過ごせた気がします。このような取り組みも、“親を孤立させないことが子どもの幸せを守る”と信じ、広い視野と長い目をもって子育てを見据えるH保育園ならではだったと思います。

 保育申請で苦い思いをしたわたしは、現場からの要望や改善点について、自治体や議会と交渉する役員を何年か務めました。集まりがある日は、会議の後にみんなで子育ての愚痴を笑いながら話したり、園での保育の様子を観察したり。余談ですが、先日ネットでT市の保育事業のページを訪れたら、保育審査の際の配点は表になって、すべてちゃんと公示されていました。わたしの経験も、あながち無駄ではなかったのかもしれません。

 エキセントリックな人だと思われがちなわたしですが、H保育園では自分が受け入れられているという実感が持てました。その結果、行事参加も保育参加も進んでできるようになり、そこで先輩お母さんや先生を観察して学んだ子育ての方法は、家でも積極的にとり入れることができました。