美大在学中の20歳のときに公募展で賞を取り注目を集め、写真家としてデビュー。27歳で木村伊兵衛写真賞を受賞、28歳で出産し、その後は文筆業でも賞を受けるなどマルチに活躍するアーティストの長島有里枝さんの書き下ろし連載。「女性の生き方」について多角的に表現活動を続ける長島さんが、今回は「保育園入園をめぐるあれこれ」を振り返ります。

良い面も悪い面も理解して覚悟を決めたい

 わたしが妊娠していた2001年当時、日本のインターネット個人普及率(6歳以上対象、総務省調べ)は46.3%で、2019年の89.8%と比べておよそ1/2。出産・育児に関するわたしの情報源も主に育児漫画や育児書、妊娠&ベビー雑誌でした。そして、それらに書いてあったのは大抵、当たり障りのないこと。だって、妊婦さんや新米ママを不安にするようなこと、書かないほうがいいですもんね。

 でもわたし、やっぱりもっと「本当のこと」が知りたかったなと思うのです。予定日に子どもが生まれるわけじゃないこともそうだし(第2回参照)、授乳が終わったら赤ちゃんの唇の脇に小指を差し入れ、乳首をリリースする“もうひとつの”理由についても、そう。

 母乳育児の本にはそれが、乳頭を痛めるなどのトラブルを防ぐためだと書かれていたけれど、断乳後の自分の胸を鏡で見たときは思わず、「ゼッテー違う理由!」と心の中で叫びました。BC時代(紀元前ではなくBefore Childの略)よりひとまわりほどサイズアップした乳首シスターズは、驚異の吸引力で赤子に吸われ、彼女たちを支えるだけのハリがもはやない乳房の真ん中で「お役御免!」と言わんばかりに、伸びきったこうべを垂れていたからです。

 だって、そんなこと話したら産みたくなくなっちゃうでしょう? そういう先輩方の気遣いはありがたいのですが、結局、産むのも母乳を出すのもわたしです。自分の体や人生が先々こうむる“残念”な事情も、ちゃんと知っておきたい。出産も育児も思い通りにならないことだらけなのだから、せめて自分が選んだり決めたりできる部分に関しては、良い面も悪い面も理解して覚悟を決めたいのです。

 子どもを産んだことで起こるあらゆる変化が、トラウマになることだってありますから。卑近な例でいうと、シングルになってせっかくすてきだと思える人が現れても、いい感じになると必ず「でもわたし、乳首垂れてるんだよな……」と考えてしまい、最後の一歩を踏み出せない、とか。

 もっと「裏」情報が欲しかったわたしですが、それを最も痛感したのは保育園探しにおいてだったかもしれません。

次ページから読める内容

  • 保育園に入れない!
  • 「離婚の決断」を後押しした出来事
  • 保育園が子育ての転機に
  • 1歳4カ月にして味方に出会えた息子

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