美大在学中の20歳のときに公募展で賞を取り注目を集め、写真家としてデビュー。27歳で木村伊兵衛写真賞を受賞、28歳で出産し、その後は文筆業でも賞を受けるなどマルチに活躍するアーティストの長島有里枝さんの書き下ろし連載。最終回は、今や大学生になった息子が小学生だった、10年前の東日本大震災当時を振り返ります。

大学生になった子どもと「朝から晩まで一緒」

 年が明けてすぐ、東京は近県とともに2度目の緊急事態宣言下に置かれました。どうやら今年も、新型コロナウイルス対策に奔走する年となりそうな予感……。そんななか、小さいお子さんを育てる親御さんたち、本当にお疲れさまです。

 思いつく限りの負担を想像するだけで、思わず目頭が熱くなってしまいます。なにせ、子育ての頼みの綱である人海戦術が使えないのですから。なかでも、子育て界の2強であるじぃじ&ばぁばが、新型ウイルスに対して最も脆弱な世代であるという過酷な現実は、わたしの胸を締めつけます。

 いま、ためらわずに彼らを動員できる子育て世代はいないでしょうし、シッターさんやファミリーサポート会員さんなどの利用も、自分が頑張ればお願いしなくとも……と、なしで済ませようとする心理が働きがちなのではないでしょうか。その結果、通院するほどではないが平常心とも言い難いレベルの憂鬱を持て余す人も、増えているのでは。

 我が家のRパイセン(息子)はすでに大学生。なので子育て負担はありません、と言いたいところですが、そうでもない。卒業式も入学式もキャンセルだったうえ、全授業オンラインで本人のストレスはMAX。さらに、大学生のなんたるかを見よう見まねで先輩から体得できないせいか、いまだ高校生のようなあどけなさ(あくまで親の観点です)も残っています。

 わたしはといえば、昨年ぐらいから息子が出ていく日を「ロス」レスで受け入れるメントレばかりしていたので、保育園入園前以来の「朝から晩まで一緒生活」には戸惑いを感じています。最初は少しうれしかったが、子育て思い出ランキングでダントツ1位の乳幼児期に、大学生が勝てるはずもなく

顔を見て話を聞くというなんでもないことが大切なとき

 体は大人なのに、行動はあの頃とさして変わらない(あくまで親の実感です)息子――ボトムスは寝間着のまま空腹になると自室から出てきて、キッチンをうろつくついでに課題の愚痴を母(仕事中)にこぼす――を見ていると、かわいいと思う気持ちと、イラッとする気持ちがないまぜになって、あなた、子ども時代からまだ卒業しないんですか?と問いたくもなります。