反りが合わないと思っていた会社の同僚もママ友も、そしてもちろん夫と子どもも、大事なチームメイトだった…。18話続いた連続共働き小説、いよいよ最終回です!

【これまでのお話】
第1話 『野櫻家の選択』連載小説スタート!
第2話 あの時転職を決断した自分を褒めてやりたい
第3話 保育園の卒園式の朝、着物持参で義母が…
第4話 苦手な岩田と卒園後も付き合い続くと思うと…
第5話 入学式直前の美紀に部下からトラブル報告
第6話 それって職場いじめなんじゃない!
第7話 あの2人を組ませるのfはまずいのでは?
第8話 共働きの危機? 夫と子から同時重大報告
第9話 上司に部署で罵倒され、退職・起業を決意
第10話 和也の専業主夫モードで夫婦関係ゆがみ始めた
第11話 夫のための起業本探す姿を部下に見られた
第12話 学童の親子キャンプへの参加は大正解だった
第13話 起業セミナーで自覚「俺のビジネスプランはだめだ」
第14話 企画をまとめた私が、ただの添え物ですか
第15話 管理職ママの美紀に吹き始めた逆風
第16話 俺、面接突破した これでスタート切れる!
第17話 私をこのプロジェクトから外すって?
第18話 最終回/仕事と家庭両方に世界持つ意義、再認識 ←今回はココ

『野櫻家の選択』 主な登場人物

◆野櫻美紀(のざくら みき) 三十六歳/大手人材会社の営業企画部に所属。夫とは学生時代のゼミで知り合った。明るく前向き、大雑把。マイペース
◆野櫻和也(のざくら かずや) 三十七歳/大手住宅メーカーの人事部に在籍。おおらかで人当りが良さそうに見えて、実は神経質で小心
◆野櫻勇斗 (のざくら はやと) 六歳/保育園年長クラス。早生まれで小柄。性格は父親に似ておだやかで争いごとは嫌い

美紀をプロジェクトから外すことが既に決定事項になっていた

 美紀の不安は的中した。翌日会社に行くと、課内のその日のスケジュール帳に『一五時~スイーツ大作戦プロジェクト会議』という項目が足されていた。しかし、その参加予定に美紀の名前はない。参加者は水谷のチームと御前崎となっている。美紀をプロジェクトから外すことが、既に決定事項になっていた。それについては皆、話題にしない。気にしないふりをして、美紀は仕事をした。そして、会議開始まであと五分という時、

「じゃあ、会議に出席する人はB会議室へ」

 水谷が声を掛けると、水谷チームが席を立って別のフロアにある会議室に向かった。すぐに御前崎もそれに続く。美紀と美紀のチームのスタッフが席に残された。気まずい空気が漂っている。。

 なぜ、マネジャーが参加しないのだろう。

 みんながそう思っていることを意識しつつ、美紀は平気な顔をして、自分の仕事に集中するふりをする。ほかのスタッフも黙って仕事をしている。沈黙の状態がしばらく続いた後、ひとりの女性スタッフがついに声をあげた。

「あの、こんなこと聞くのは失礼かもしれないんですが、どうして野櫻さんは会議に参加なさらないんですか?」

 みんなが一斉に美紀の方を見る。みんなも、やっぱり気にしていたんだ、と美紀は思う。

「ゼネラルマネジャーから、今後は水谷さんのチームでやった方がいいって言われたのよ」

「どうしてですか?」

「んー、今回の店の選定にあたって、私が公私混同したんじゃないか、と疑われたの。夫の仕事に便宜を図るために店を選んだんじゃないかって」

「実はそれ、水谷さんからも聞いたんですけど、そんなことないですよね」

「もちろんよ。確かに夫の知り合いの店ではあるけど、仕事上のつきあいはないし、それで夫が得することなんて何もない」

 それを聞いて、質問した女性スタッフは安堵した顔になる。

「そうですよね。野櫻さんはそんな人じゃないですよね」

 職場のぴりぴりした空気が、一気に緩んだ。みんなも、ほっとした顔をしている。

 やっぱり自分について、よくない噂が流れていたらしい。噂は本人の耳には入ってこないし、でたらめな内容でも否定のしようがないのでどうしようもない。

 噂の出どころは水谷だろうか。それとも、御前崎が私のことを嫌って、いろいろしゃべったのだろうか。

 と、その時、フロアのドアを開けて御前崎が戻って来た。