目立ちたがり屋の御前崎と、地道な努力家の中村。マネジャーとしての美紀の判断で、この2人の部下を組ませたことが、優秀な中村の退社という痛手を負うきっかけとなり…。

【これまでのお話】
第1話 『野櫻家の選択』連載小説スタート!
第2話 あの時転職を決断した自分を褒めてやりたい
第3話 保育園の卒園式の朝、着物持参で義母が…
第4話 苦手な岩田と卒園後も付き合い続くと思うと…
第5話 入学式直前の美紀に部下からトラブル報告
第6話 それって職場いじめなんじゃない!
第7話 あの2人を組ませるのfはまずいのでは?
第8話 共働きの危機? 夫と子から同時重大報告
第9話 上司に部署で罵倒され、退職・起業を決意
第10話 和也の専業主夫モードで夫婦関係ゆがみ始めた
第11話 夫のための起業本探す姿を部下に見られた
第12話 学童の親子キャンプへの参加は大正解だった
第13話 起業セミナーで自覚「俺のビジネスプランはだめだ」

『野櫻家の選択』 主な登場人物

◆野櫻美紀(のざくら みき) 三十六歳/大手人材会社の営業企画部に所属。夫とは学生時代のゼミで知り合った。明るく前向き、大雑把。マイペース
◆野櫻和也(のざくら かずや) 三十七歳/大手住宅メーカーの人事部に在籍。おおらかで人当りが良さそうに見えて、実は神経質で小心
◆野櫻勇斗 (のざくら はやと) 六歳/保育園年長クラス。早生まれで小柄。性格は父親に似ておだやかで争いごとは嫌い

私のことを信頼していないってことなんでしょう?

「会社を辞めるって、どうして?」

 中村はそれにはすぐに答えず、ふっと口元に笑みを浮かべた。

「私、野櫻さんにあこがれていたんです。結婚して、子育てしながら、キャリアも捨てていない。それでいて、歯を食いしばって頑張っているみたいな悲壮感もない。生き生きと毎日を楽しんでいる感じが素敵だと思っていたんです。だけど……」

「だけど?」

「今回の件でがっかりしたんです。野櫻さんでも、やっぱり男性の方が上、女性はアシスタントでいいって思ってるんだな、と」

「そんなことない。それは」

「だって、これくらいの案件、私ひとりで十分にこなせると思いませんか? それなのに、わざわざ御前崎さんと組ませるなんて、私のことを信頼していないってことなんでしょう?」

「信頼してないわけじゃない。むしろ中村さんと一緒に仕事することで御前崎くんにいろいろ考えてほしかった」

「でも、結局は御前崎さんが対外的な交渉や発表を仕切っているじゃないですか。私はただの添え物にしか見えない」

 そう言われると、反論できない。確かに、目立ちたがりの御前崎が前に前にと出たがった。中村はそれに反論するわけでもなかったし、おとなしいので目立つのを避けたいのか、と美紀は思っていた。

「ごめんなさい。その点は気にしてはいたのだけど、我々があまり細かく口を挟むのもどうかと思って」

「最初からこうなることは予想できたじゃないですか。あの人、もともとそういう性格だし。目立つ仕事はやるけれど、そうでないものはほかに押し付けようとする。そのくせ企画力はないから、ひとの企画に便乗しようとするし」

 厳しい見方だが、否定はできない。上司である美紀に対してはいい顔をするが、自分と同じか下だと思う人間に対しては横柄なふるまいをする。見える範囲では美紀も注意するが、見えないところでやってることも多いだろう。

「営業部との打ち合わせでも、事前に企画書をまとめたのは私です。なのに、プレゼンするのが御前崎さんだったから、御前崎さんが単独でやったみたいに思われたじゃないですか」

 御前崎は発表の中で「私が調べた限りでは」とか「このデータから私が読み取ったのは」とか、自分の仕事ぶりを強調するような話し方をしていた。何も知らない人間が聞いたら、御前崎がひとりで資料をまとめたようにしか思わないだろう。

「悪かったわ。企画書を作ったり、資料を集めたりするやり方を御前崎くんに覚えてもらいたくて、あなたにつけたつもりだったんだけど」

「それで、プレゼンしたり、強気で相手を説得したりすることを私に御前崎さんから学ばせたい、とマネジャーはおっしゃったそうですね」

「どうしてそれを?」

次ページから読める内容

  • 人の仕事ぶりはふだんの何気ないやりとりから推察できる
  • 正直ここで見るものは見たと思うんです
  • ふと和也の孤独に触れた気がして、こころがうずいた

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