今年5月末に公開した「ハーバード現役合格した娘の母が公立主義貫いた理由」の記事では、大分県でオンラインの英語教室、ディリーゴ英語教室を営む廣津留(ひろつる)真理さんに、「御三家を目指すような中学受験に無理をしてまで挑むことが、なぜ不毛なのか」を語っていただき、大きな反響をいただきました。廣津留真理さんの一人娘で、現在はプロのバイオリニストや大学の客員講師として活躍しているすみれさんは、公立の小中高から塾に行かずに、2012年に米ハーバード大学に現役合格し、2016年に卒業。その力を育んだのは、幼いころから親子二人三脚で取り組んだ家庭学習だったといいます。

そこで、廣津留さんに、子どもの底力を引き出す家庭学習のポイントについて語っていただく新連載がスタート! 第1回の今回は、家庭での学習習慣を定着させるためのメソッドについて。毎日の学習目標の設定や管理方法、楽しく勉強するようになるコツなどについて、詳しく解説してもらいました。ぜひ、この夏休みから、家庭の新習慣として取り入れてみてはいかがでしょうか。

自由時間は生産性を高め、想像性を養うために不可欠

日経xwoman DUAL(以下、――) すみれさんが幼いころから家庭学習に力を入れてきたそうですね。毎日達成を目指す、小さな目標を立ててきたとのこと。家庭学習なのに、日々の学習目標までしっかり設定していたとは本格的ですね。

廣津留真理さん(以下、廣津留) 娘の家庭学習においては、バイオリンと英語のレッスンを5分ずつという日々の目標を設定していました。日々の目標を設定したのは、学習習慣を身に付けることにも役立つという側面はもちろん、そもそも「のんびり時間」を捻出するためでした。

―― え? 「のんびり時間」を捻出するため?

廣津留 はい。のんびりする時間を持つことは、生産性を高め、クリエーティビティーを養うために不可欠です。一人でのんびりと過ごす時間にこそ子どもは自由に思考し、その子なりのオリジナルの発想力が育ちます。そして、没頭できるような「好きなこと」を見つけていきます。

 わが家の場合、長期目標は「社会にインパクトを与えられるような人間になる」ことでしたが、社会貢献は、その子が好きなことを通じて行うべきです。だから、早めに好きなものが決まるといいなと思い、そのためには自由な時間が不可欠と考えました。

―― 「のんびり時間」にクリエーティビティ―が養われるというのは、分かる気がします。自分のしたいことを思う存分やる中で、その子のオリジナリティーが出てくるのでしょうね。ただ、のんびり時間を捻出するために、日々の学習目標を立てる、というのがつながらないのですが、どういうことでしょうか?

廣津留 子どもには宿題など、やらなければいけない課題がたくさんありますよね。それ以外にも、特に伸ばしたい能力があったり、不得手を克服したりするために、強化したい学習や取り組みもあるはずです。

 これらをいかに効率的にこなすかが、確保できる「のんびり時間」の長さを大きく左右します。課題にダラダラと取り組むのではなく、ゴールを設定して、そこから日々の学習目標に落とし込んでいくことが最も効率的な進め方です。

 上記の課題の中でも、特に時間が取られがちな学校や塾などで出される宿題の多くは、いわゆる「読み書きそろばん」の範囲で、はっきり言うと事務処理能力にすぎない、と私は考えています。クリエーティブに脳を使う発想力を伸ばし、若いうちに自分の好きなことを見つけるためにも、事務処理能力の獲得に長々と時間を割いている場合ではありません。ですので、効率的にさっさと終わらせてしまいましょう、ということですね。

 わが家で娘が塾に行かず、家庭学習を軸に据えた理由もここにあります。