同居のメリットは? 親世帯は安心感、子世帯は共働きサポート

河崎 色々な不満が飛び出しましたが、二世帯同居にはメリットもあるのではないでしょうか? 積水ハウスの調査では、二世帯同居のメリットで次のような声が多く上がりました。

親世帯側の同居メリット(二世帯同居家族調査/住生活研究所調べ、2019年、n=104)
親世帯側の同居メリット(二世帯同居家族調査/住生活研究所調べ、2019年、n=104)
子世帯側の同居メリット(二世帯同居家族調査/住生活研究所調べ、2019年、n=247)
子世帯側の同居メリット(二世帯同居家族調査/住生活研究所調べ、2019年、n=247)

鈴木 うちは、旅行に行くときなど、ゴミ捨てをお互いにやりあっています。

河崎 家事を手伝い合うということですね。

大野 共働きなら皆さんそうだと思いますが、子どもの病気の時、面倒を見てもらっているので、私があまり仕事を休まずに済み、とても助かっています。

加藤 私は家を7時ごろに出ないといけないので、母が子どもを保育園に送ってくれて、とてもありがたいです。お迎えは自分でやっています。

杉田 うちは、子ども達からは予想以上に同居が好評です。母の趣味の家庭菜園に一緒に行って、芋ほりをしたり、イチゴを摘んだりという経験は忙しい共働きだとさせてあげられないかなと思うので、同居してよかったなと思います。私は同居していても、子ども3人+夫婦の5人家族という意識なのですが、子ども達は「うちは7人家族でしょう。みんなで楽しく暮らそうね」と言うんです。子どもは、色々な人に囲まれて仲良く暮らすのが幸せなんだなと実感しています。

大野 色々な人と暮らすメリットは確かにありますね。うちは、私が子どもを叱っても、母が緩衝材になってくれるので、子どもが追い詰められることがなくてよかったと思います。世代によって「怒るポイント」が違うので、子どもがときどき父を怒らせたりするのですが、それも、社会には色々な人がいるということを知るチャンスになっていると思います。

 親側のメリットはというと、小さい子どもがいると、家庭内の会話がとても多いことだと思います。もしも老夫婦2人だけで暮らしていたら、こんなにたくさん話さないんじゃないかな、というくらい、両親共にしゃべっているんですよ。健康にもいいのではないかなと思います。

鈴木 教育面でもメリットがありますね。子どもが文字の練習をしていても、私は家事に追われて、ていねいに見てあげられないんですが、義父母はちゃんと見てくれるんです。「書き順はこうだよ」と教えてくれたり、「上手だね」と褒めてくれます。子どもが「カルタしよう」と言ってきても、私は、「散らかさないで。あとでね」が多いですが、義父母の家に行けば、じっくり付き合ってくれます。

早川 うちも義母が教育熱心で、孫に色々なことを教えてくれたり、ドリルをやらせてくれます。

菊池 義母は私たち世代があまり見ないNHKのドラマや時代劇、教養番組が好きなのですが、子どもが一緒に見て色々な話を聞いてくるんです。朝ドラを見ながら、「この頃おばあちゃん、20歳だったわ」とか、昔のオフィスのシーンが出てくると「パソコンがないでしょう。おばあちゃんのころはこうだったのよ」など、親にはできない話をしてくれるのがいいですね。

河崎 親とは違う世代の人が身近にいることで、色々な価値観を伝えられるのですね。今は親世代も元気ですが、今後の同居生活と住まいについてどのように考えていますか?

竹中 今住んでいる家は、親世代、子世代が半分ずつ費用を出しあって建てました。将来については、まだ両親が元気なので、そういう話題は切り出しにくくて話したことがないんです。私には弟もいるので、親が相続のことをどう考えているのかなと知りたい気持ちはあります。

加藤 将来、母が衰えた場合は、在宅で見ていき、いずれは施設のお世話にという話になると思います。母を送るまでは、同居を続けたいです。

鈴木 夫がこの家に住み続けたいと言っていて、義母も孫と離れたくないと言っているので、同居は続けると思います。ただ、バリアフリーな家ではなく、家の前に階段もあるので、この先、義父母が衰えてきたら、色々な問題が出てくるだろうと覚悟しています。

小倉 うちは親世帯と共同で新築したので、バリアフリーも意識しました。階段の幅は広くして、昇降機を取り付けられるように、壁も補強しています。設備的な工夫はできるだけしてあります。

菊池 新築するときに、家で介護をしてもいいように、日当たりのいい2階をリビングにしました。水回りも1つの階で完結するように考えてあります。家族と一緒に過ごしながら介護をしてあげて、看取りまでするのかなと何となく思っています。

河崎 子世帯は今、同居生活からたくさんのメリットを受け取っています。今助けてもらっていることで、将来は介護などで親を助けていこうという覚悟ができていくのかもしれませんね。

 菊池さんのお宅のように、リビングの一角を介護スペースにできるように計画しておくのは、家族のつながりを感じられるとてもいいアイデアです。広々としたリビングを作っておけば、介護が必要になった時にベッドを置いたり、一角を仕切ったり、効率の良い動線を作ったりできるので便利ですよ。

<b>Before:</b>仕切りの無い広いリビングの例。アイランドキッチンとダイニングテーブルを設置して、自宅で料理教室も開催できる
Before:仕切りの無い広いリビングの例。アイランドキッチンとダイニングテーブルを設置して、自宅で料理教室も開催できる
<b>After:</b>親との同居が必要になったら、リフォームで仕切りを作り、親世帯用のフロアにすることもできる
After:親との同居が必要になったら、リフォームで仕切りを作り、親世帯用のフロアにすることもできる

河崎 子世帯側から同居を持ちかけた場合は、自分たちのライフスタイルや暮らしのビジョンを親世帯に示してから同居をスタートするため、適度な距離感を保ちやすい傾向があります。二世帯同居成功のコツは、この「適度な距離感」です。

 例えば、リビング・ダイニングスペースを広くすると、季節の行事やお祝い事でも大勢で食事ができるコミュニケーションの場として活用できる一方で、作業や食事の時間帯が重なっても、お互い心地よい距離感を保つことができます。二世帯同居をスタートしたいという人は目指す暮らし方や適度な距離感を考えて、子世帯から声を掛けてみてはいかがでしょうか。

●下編では、積水ハウスが提案している「適度な距離感」のある空間づくりについても詳しく聞いていきます。

取材・文/福本千秋 写真/木村 輝

多世帯の暮らし「カゾク・ト・カゾク」の詳しい情報はこちら
これまでにない大空間のLDK「ファミリー スイート」の詳しい情報はこちら