同居のきっかけ:二世帯同居を言い出すのは子世帯が多い

河崎さん(以下敬称略) それではまず、同居のきっかけについてお聞きしていきます。積水ハウスの調査によると、二世帯同居を言い出すのは子世帯のほうが多いというデータがあります。子側からが39.9%。親側からが19.7%という結果です。

同居を言い出した人(二世帯同居家族調査/住生活研究所調べ、2019年、n=351)
同居を言い出した人(二世帯同居家族調査/住生活研究所調べ、2019年、n=351)

 今回の出席者の方は、子側からが9人中4人。親側からが4人(どちらともなくが1人)でした。

 みなさんの同居のきっかけも聞いてみたいと思います。妻の親と同居している加藤さんと竹中さんは、二人ともご主人が不在がちで、共働きの暮らしを手伝ってもらうために、実家に戻られたのですね。

 夫の親と同居している早川さん、小倉さんは、共に住み替えのタイミングで、子側から同居を持ちかけたとのことですが、その理由は何だったのでしょうか。

早川 もともと23区内で賃貸暮らしをしていたのですが、娘の小学校入学を機に家探しをスタートしました。しかし、新築、中古、マンションと色々見てもなかなか、予算と条件が折り合う物件に出会えなかったんです。また、郊外のマンションで一人暮らしをしていた義母が、管理費や修繕積立金、駐車場がもったいないと話しているのを聞き、それなら同居をしないかと持ちかけました。

小倉 わが家も、共働きの都合上、都内の便利な地域で家を探していました。しかし夫婦のローンだけでは資金が足りなかったので、郊外のマンションを売却した義父母と資金を出し合いました。

河崎 菊池さんは、ご結婚前からご主人がご両親を呼び寄せておられたんですよね。どんな流れだったんですか?

菊池 結婚したとき、夫と義母が住む家に、私が入っていくという形で、自然に同居が始まったんです。結婚と義母はセットでした(笑)。その後新築をしたのですが、今も同居を続けています。

河崎 親世帯から提案されたのは、夫の親と同居グループでは長谷川さんと鈴木さんです。長谷川さんの場合は、もともと親世帯が二世帯用の家に住んでいたのですね。

長谷川 はい。うまく行かなかったら解消すればいいという軽い気持ちで同居を始めたのですが、意外とうまく行っています(笑)。

河崎 鈴木さんも、二世帯で住める家があったため、親側から提案されたそうですね。

鈴木 義父母が賃貸用に建てた家があったので住むことになりました。家賃を払っているのですが、相場の半額くらいにしてもらっているので、家計的に助かっています。

河崎 妻の親と同居グループの杉田さん、大野さんも親側からの提案ですね。

杉田 もともと実家の近くに住んでいたのですが、父が亡くなって不安もあったせいか、母から同居を提案されました。

大野 うちは父は健在ですが、私の兄弟が皆独立したため、母は唯一の娘である私に頼りたかったようです。ただ、母と私で同居話を進めてしまったので、父はちょっと不満だったみたいです。

河崎 子どもからの提案には共働きを助けてほしいという暮らしのサポートを求めたり、資金で協力しあいたいという気持ちがあるようです。親からの提案には、子どもを助けてあげたい、不安から子どもに頼りたいという気持ちがあるようですね。

 ところで、皆さん、同居には満足していますか?(挙手。とても満足が5人。やや満足が2人。あまり満足していないが2人という結果に)。半分以上の方がとても満足しているんですね。

共用部分の使い方、衛生面、光熱費はどうする? 親子でもルールは大切

河崎 読者の皆さんが知りたいのは「二世帯同居って、世帯間や義理の親との間でトラブルが起こりそう」ということだと思います。衛生観もそのひとつですよね。共用部など、使い方で工夫されている所はありますか?

加藤 うちは冷蔵庫が共用なのですが、母の場合は3個パックのお総菜などを1個食べたらあとは入れっぱなしということがよくあるんです。「あのもずく、はやめに食べたほうがいいわよ」なんて言うのですが、結局賞味期限が切れてそのままということもしょっちゅうです。

河崎 加藤さんが捨ててあげないんですか?

加藤 そこは一線を引いて「自分でやってね」と言っています。分別も面倒ですし(笑)。娘だからバシッと言えるのかもしれませんね。

小倉 衛生面の意識が世代で違うのは悩みますよね。我が家も冷蔵庫が共用なのですが、義父母が入れたものが傷んでいた、ということが頻繁にあります。子どもの口に入って、食中毒でも起こしたら大変なので、私はこっそり捨てているんです。義父母にも「子どもがまだ小さくて心配だから、賞味期限以内に食べてほしい。気を付けて」と何度も言っているのですが、なかなか分かってもらえません。

早川 うちは私がズボラなので、賞味期限切れのものが冷蔵庫に入っていたりするんです。「そうだ、あれ、捨てなきゃ」と思ってみると、なくなっていたりします(笑)。

河崎 えっ、どういうことですか? 完全分離型なので冷蔵庫も別々ですよね?

早川 「子世帯の留守中でも入って来ていいですよ」というルールなんです。それで、様子を見に来て、見かねて捨ててくれるんでしょうね。

河崎 食器洗いについてはどうですか? 

小倉 食器洗いは食洗機を使っているのですが、義父母に食器をセットしてもらうと、洗い残しがあったり、お箸が脂っぽいままだったりするんです。その度にイラっとするのもいやなので、食洗器に食器をセットするのは私たち夫婦の役割というルールにしました。

大野 うちはキッチンが別々なので、お皿洗いも各世帯でやるルールです。従って、朝食のお皿も夜帰宅するまでそのまま(笑)。洗ってもらって、食器棚の違うところに片付けられるのもストレスなので、それでいいかなと思っています。

<b>●キッチンのプチ分離</b><br>家族の距離感に合わせてダイニングを分けるプラン例。設備としてキッチンはひとつであっても、食器棚や冷蔵庫を分けることで暮らしやすくなる
●キッチンのプチ分離
家族の距離感に合わせてダイニングを分けるプラン例。設備としてキッチンはひとつであっても、食器棚や冷蔵庫を分けることで暮らしやすくなる

河崎 しまい方にこだわりが出る食器棚や、食品を管理する冷蔵庫はとてもパーソナルな場所です。キッチンは一つでも、その中を分離して、食器棚や冷蔵庫は各世帯のものを用意して分ける、中でエリア分けをする等すると暮らしやすくなりますね。

 その他にも、生活のなかで工夫されていることはありますか?光熱費などはどうですか?

杉田 うちは、母の家に入っていった形での同居なので、光熱費は母が払っているんです。毎月お金を渡しているのですが、季節によって光熱費が高くなるはずなのに、どのくらい増えたかや、いくら必要かを教えてくれなくて困っています。母は性格的に、きっちりとルールを決めるのが苦手なんですね。もともとは仲良しの母娘なのですが、私は2つの家族をつなぐ立場なので、母に意見をしなければならないときもあり、折り合いがつかないと、悩んでしまいます。

加藤 私も5年前、ルールを決めずに実家での同居を始めたので、大変でした。実の親子だからやっていけると思ったのですが、長く離れていたので、お互いの生活のペースがつかめないわ、子育ての方針も違うわで、一つ一つに慣れるのに半年くらいかかりました。今では、ルールは逐一話し合って、軌道修正するようにしています。

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