ソフトウエア開発のシックス・アパートで広報を担当する壽かおりさんが、リモートワークのノウハウを披露する本連載。最終回は、夫婦が共にリモートワークをする際に起こりがちな問題と、それを予防するために話し合っておきたいことを教えてくれました。

夫婦同時のリモートワークでストレスがたまることも

 こんにちは。2016年夏から社員全員がリモートワークで働くシックス・アパートで、広報を担当している壽かおりです。

 現在の状況を見ていると、まだしばらくは新型コロナウイルスの感染対策に気を配っての生活が続くでしょう。ワクチン開発の進捗には希望の光が見えつつも、安全性が確かめられ、誰もが接種できるのはしばらく先になりそう。手洗い・換気・マスクといった新しい生活様式は、コロナが収束してもきっと多くの人が続けるでしょう。同じようにリモートワークも、一時的なものにとどまらず、集まらなくても仕事が進む令和の働き方のスタンダードのひとつとして定着していくはずです。

 今取り組んでいる仕事はもちろん大事だけれど、家族との暮らしはそれ以上に大切です。最終回は、在宅で働くことで一緒にいる時間が増えた家族との関係を円滑に保つヒントをお話しします。

 今年の4月ごろから「コロナ離婚」という言葉を見かけるようになりました。ステイホームが求められ、家族全員が家にいた頃ですね。ずっと顔を付き合わせていることで、互いの歩調が合わずストレスがマックスになり、もう一緒にいられないと思った夫婦がいるそうです。一方で、一緒の時間が増えたことをきっかけに、絆が深まった家族もたくさんいます。離婚のほうではなく、絆が深まるほうへと向かいたいですよね。

 そのためには、家でどう働きたいかをパートナーとすり合わせることが大事です。当たり前ですが、パートナーであっても親子であっても、それぞれが固有の感情を持つ個人です。要望は態度ではなく言葉で伝えないと伝わりません。まず、自分が希望する家での働き方を言葉にまとめる。それをパートナーに伝えて、相手の希望とすり合わせましょう。

 夫婦が二人とも在宅で働くということは、日々の暮らしも仕事中もずっと一緒なわけです。「自分たちは『あうん』の呼吸で、何も言わなくても分かり合えている」と安心しきって、コミュニケーションをサボると危険信号がともります。家族だからこそ、関係を良くする努力は必要だと思うのです。

 リモートワークをしながらの暮らしでは、事前に役割分担と希望を明確にしておかないと、自分の期待と相手の行動とのすれ違いが発生します。例えば、こんなことです。

・家にいるなら家事や育児をもう少し分担できると思ったけど、全然動いてくれない。

・快適な温度設定が違うため、一緒に働くリビングのエアコン設定がいつも自分に合わず、つらい。

・相手のオンライン会議が多すぎて、自分の仕事に集中できない。

・相手があまりに遅い時間までリビングで残業しているので、自分はオフになりたい時間なのにリラックスできない。

・自分は同僚と雑談するように気軽に話しかけたいけれど、相手は仕事中は話しかけてほしくないタイプ。

・ランチは二人分作るべきなのか? コンビニに出掛けたようだけど私の分も買ってきてもらえるのか? 一緒に食べるべきなのか?などと毎回悩む。

・荷物が届いたとき取りに行くのが、いつの間にか毎回自分の役目になっていて不公平に感じる。

 このようなことが積み重なると、だんだん自分の負担と我慢が増えていき、不満がマックスまでたまったときに大爆発してしまいます。

 反対に、「自分は業務量が多い分、相手が家のことを多めにやってくれて当然」と任せきりになり、感謝も伝えない、「期待通りにやってくれてない」と不満に思うこともあるかもしれません。