「一人の時間が欲しいんだよね」と妻に伝えたのは、6月に入ってからでした。驚いていましたね。「え? 『家族との時間が増えてラッキー!』って思っているんじゃないの?」と言われました。

 こういうとき、やっぱり夫婦であっても気持ちはきちんと伝え合わないと分からないもんだな、と思います。お互いに「よかれ」と思ってやっていることが、相手のニーズとずれていることって、けっこうあると思うんです。

 例えば、「パパ友」もそうですよね。ママ友同士だと、今回の自粛期間中、オンライン飲み会などをしてストレス発散をしていた人もいましたが、「じゃあ、パパたちもやればいいじゃん」というのはちょっと違うと思うんです。そもそも、子どもがいるから成立するパパ友って、「本当に必要なのかな?」と疑問です。

 両親学級などの仕事をしていると、ときどき自治体からも「パパ友を作る講座をやってください」と依頼されることがあります。その際には、「パパ友が欲しいと思っている人は、そこまで多くないような気がしますよ」とお伝えしています。ぼく自身、パパ友がいればよかったのに、と思ったことも、逆に、いなくて困ったこともないですし、パパ友が欲しい人であれば、すでに皆さんに声を掛けて交流をしていると思うんですね。

 ぼくにも仲のいいお父さんはいますが、それはまた、子どもを通じた関係というのとは違うような気がしているのです。

パパ会での話題といえば、もっぱらゲームなどの話ばかり

 ぼくは、子どもの保育園で保護者会の役員もしてきましたし、送り迎えもメインでしてきたので、保育園のパパたちとの交流はあります。飲みに行くこともある。ですが、ぼくにとってパパ会というのは、あくまで「外に飲みに行く口実」という位置付けにすぎないんですね。妻が、仕事上の飲み会だといい顔をしなくても、「パパ会へ行く」と言うと「行って来なよ!」と快く送り出してくれるので、ラッキー!といった感覚です。

 実際、パパ会でぼくたちがどんな会話をしているかというと、育児の話なんてほぼしません(あくまでもぼくの交際範囲の話です)。「あそこは『ポケモンGO』のポケモンがよく出るよ」とか、「こんなスマホゲームが面白い」とか、そんな感じです(笑)。つまり、わざわざパパ同士が集まって飲んでいる意味っていうのは、そこまでない。こんな時間があるなら、もう少し、自分の趣味やゲームなどができる一人時間が欲しいと思っているパパは誘っても来ません。

 一人時間が欲しいとか、自分なりのストレス解消法があるというような話って、パパはあまり進んで口にしないんじゃないでしょうか。家族と過ごす時間が長くなってきているからこそ、これまで以上に「自分とは違う相手の価値観」に気づいていくことは、お互いに必要なことなのかもしれません。特に、今回のような自粛期間中は、パパにはママとはまた違ったストレス解消法があるということを、少し知ってもらえるとうれしいな、と思います。

取材・文・写真/武末明子(日経DUAL編集部)