図書館は、ただ本を貸し出すだけの場所ではなく、子どもの学びをサポートするための大切な役割を担っています。なかでも、新学習指導要領に掲げられる「主体的・対話的で深い学び」の実現に、学校図書館の活用が期待されています。しかし私たち親は、その学校図書館の役割や内情をどこまで理解しているでしょうか。この連載では、学校図書館で働く司書の役割や思い、先進的な取り組みをしている図書館の紹介などを通じて、子どもの学びを深めるための図書館の存在について考えていきます。

2回目は、公立小中高の学校図書館で司書として働く3人のリモート座談会の後編。新型コロナによる休校中に考えた図書館の役割、未来の図書館の可能性などを語りました。

【座談会の参加者】

東京都杉並区立小学校司書 横山寿美代さん
学校司書歴16年。任意団体 学校図書館プロジェクトSLiiiC代表。白百合女子大学非常勤講師。

東京都内区立中学校司書 衛藤北斗さん
学校司書歴5年。公共図書館、美術館内専門図書館などで勤務した経験も。

埼玉県立高等学校司書 宮崎健太郎さん
学校司書歴22年。「埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本」の活動にも携わる。

日経DUAL編集部(以下、――) 前回「子の学び支える学校図書館 知られざる司書の役割」では、コロナ禍の話が出ました。臨時休校中はどのような働き方をしていましたか。

衛藤北斗さん(以下、衛藤) 休校前日は、私が勤める中学校の期末試験の最終日でもありました。急きょ、本の特別貸出をしますと告知し、休校中の登校日も特別貸出をしました。

 4月以降の自宅待機中も、自粛が解けたらソーシャルディスタンスを保ちながらどう開館するかを考え、ガイドラインを作ったり、司書同士で情報交換をしたりして、学校が再開したらすぐに先生方に相談できるよう準備していました。

 この間、いろんなことを考えましたね。経済面のこと、学校図書館のこと、教育現場も変わっていくのでそこにどう関わっていけるのか。考える時間はたくさんあったので思考を巡らせていました。

コロナ禍で学校図書館の在り方も問われることに。画像はイメージ
コロナ禍で学校図書館の在り方も問われることに。画像はイメージ

宮崎健太郎さん(以下、宮崎) 私が勤める高校も、明日から入試期間で生徒は休み、というタイミングで臨時休校になったので、いろんなことがやりにくかった。生徒の本を読みたい気持ちは尊重してあげたい、なんとか登校日に安全な形で生徒に本を貸せないかと先生方にかけ合って、2回の登校日に開館しました。

 また、埼玉県高等学校図書館研究会ではオンライン上で、安全な図書館の再開に向けた議論を重ねていました。他の学校では、電子書籍の無料公開ページの一覧を作成したり、リストをメールで配布したりしたところもあります。4月中旬に職員の在宅勤務が認められたので、私は週に1日だけ本の納品日に合わせて学校に出勤し、あとは自宅で資料を作成していました。

横山寿美代さん(以下、横山) 私が勤務する杉並区内でも対応が分かれました。貸し出しをした学校もありますが、うちの学校はしませんでした。全学年全クラスに均一に連絡できない恐れがあったからです。

 3月からほとんど在宅勤務になったので、自分の仕事を振り返りましたね。これまで普通に学校図書館内で貸し出しをし、図書の時間にいろんなことをやってきて、それでよしとなっていましたが、できない。これからも制限される可能性は十分ありますので、そのなかで何ができるかと考えていました。

―― 自治体によっては、小学校の司書が学童保育や児童の預かり事業に駆り出されたと、取材する過程で耳にしました。契約を切られるかもしれないと思うと従わざるを得なかった、慣れない見守りで司書たちが右往左往しているのに「指導はできないから」と何もしない教員がいた、など、嘆く声も聞きました。

横山 子どもの預かり事業に司書が駆り出されたという例はあったようです。給食センター職員など他の非正規職員と一緒に生徒の預かり事業のシフトを組まされ、本来の学校図書館の仕事が数時間しかできなかった人もいると聞いています。