図書館は、ただ本を貸し出すだけの場所ではなく、子どもの学びをサポートするための大切な役割を担っています。なかでも、新学習指導要領に掲げられる「主体的・対話的で深い学び」の実現に、学校図書館の活用が期待されています。しかし私たち親は、その学校図書館の役割や内情をどこまで理解しているでしょうか。この連載では、学校図書館で働く司書の役割や思い、先進的な取り組みをしている学校図書館やその他の図書館の紹介などを通じて、子どもの学びを深めるための図書館の存在について考えていきます。

1回目は、公立小中高の学校図書館で学校司書として働く3人が、その役割や雇用面の課題などについて語ったリモート座談会の前編をお届けします。

【座談会の参加者】

東京都杉並区立小学校司書 横山寿美代さん
学校司書歴16年。任意団体 学校図書館プロジェクトSLiiiC代表。白百合女子大学非常勤講師。

東京都内区立中学校司書 衛藤北斗さん
学校司書歴5年。公立図書館、美術館内専門図書館などで勤務した経験も。

埼玉県立高等学校司書 宮崎健太郎さん
学校司書歴22年。「埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本」の活動にも携わる。

日経DUAL編集部(以下、――) 学校図書館は本を貸してくれる場所という認識はありますが、そこで働く学校司書の役割はあまり知られていないように思います。小中高の順に、その役割から教えてください。

横山寿美代さん(以下、横山) 小学校には「図書の時間」があり、週に1時間、学校図書館で読書をしたり、司書から読み聞かせや本の紹介を聞いたりと、読書に関するいろんな活動をします。小学校の図書館は、子どもと本が親しむための入り口ですし、子どもによっては学校図書館が「初めての図書館」になるため責任重大です。

 図書館の使い方、辞書や事典、図鑑などのレファレンスブックの使い方などのレクチャーもします。教科の授業の内容と関連付けたブックトークをするなど、子どもたちの勉強のためにいろいろな手助けをしています。

学校図書館の役割とは? 画像はイメージ
学校図書館の役割とは? 画像はイメージ

衛藤北斗さん(以下、衛藤) 年々、図書館や資料の使い方に慣れた生徒が増えているなと感じていますが、小学校の図書の時間のおかげですね。中学生になると部活や勉強が忙しくなって本から遠ざかると一般的に言われていますが、うちの学校は読書活動が盛んで、選書が追いつかないほど生徒たちからリクエストが寄せられています。

 先生方への資料の提供も行っていますし、職場体験などの校外活動への支援もしています。また、レファレンス(調べものや資料探しの手伝い)を重要視しているのですが、中学生はシャイだったりもするので、積極的にこちらからも声かけをしています。

宮崎健太郎さん(以下、宮崎) 高校では、生徒が各自で課題を見つけて調査や分析を行う探究学習に向けて、個別のレファレンスに答えるような仕事も多くなります。中学校以上に進路活動や部活、アルバイトなどが忙しくなり、時間的な制約で読書から離れがちなので、それを食い止めるために展示にも力を入れています。

 また、「場としての図書館」という言い方をしますが、自由にみんなが行けて集まって情報交換できる場づくりにも取り組んでいます。学校には、教室や部室以外の場所で人と人がつながる場所ってあまりないですからね。図書館はその機能も果たしています。

衛藤 「場としての図書館」というのは、小中学校も同じですよね。

横山 そうですね。ただ、小学校は中高に比べて縛りが多いです。