いつも子どもや仕事、家族のことを優先しているうちに、「自分が本当にしたいことって何だろう?」と分からなくなってしまうことはありませんか。この連載では、2021年6月の人気記事「月20万のシッター代かけても、私が自尊心を優先させた訳」の執筆者で、「フツーとは違うけれど、自分なりの幸福」を追求する文筆家&フリーライターの秋カヲリさんが、妻であり母であり、そして、一人の大人として悩み、感じてきたことを赤裸々に語ります。2回目の今回は、秋さんが感じる「夫婦のセックスレス」についてです。

「したい」と言っても押し黙られる悲しき話し合い

 忙しい共働き夫婦には、セックスレスに悩んでいる人も、意外と多いかもしれない。私と夫(当時は彼)の場合、セックスレスになったのは、忙しいからでも、子どもができたからでもなかった。20歳半ばで、夫と結婚する1年前、交際1年の時点でセックスレス。「もしや?」と振り返った時にはすでに手遅れだった。

「自分には性的な魅力がないのか?」
「これから死ぬまでセックスレスが続くのか?」
「私の性欲はどうすればいいのか?」

 と不満や不安は日々ちりも積もって山となり、暗たんたる気持ちになった。完全に、需要と供給がミスマッチだったのだ。

自分から誘う日々にうんざり 異議申し立てた

 思えば、夫と付き合ってまだ1カ月の時から夜のお誘いはなかった。私から「ねえねえ」と猫なで声で言ってみたり「今日!」と手短に宣言したりすると、察した彼(当時)が静かにうなずき、深夜決行。まるで隠語でやり取りするスパイである。一体何のミッションを遂行しているんだ?

 セックスはすればいいもんじゃない。セックスは体でするものではなく、心でするものなのだ。意欲的に創意工夫を施して取り組んでこそ成功するもので、「本日夜、よろしくお願いします」「うむ」といった業務的やり取りでするものではない。私は、もはやセックス申請書に判を押す係長と化した彼に異議申し立てをした。

 「あのう、私も一応若いおなごでありまして、こんな初期段階から自分で誘ってばかりだと、非常に複雑なんです。女として魅力がないのかな、とか思っちゃうんです、はい」

 重くならないように自虐を少々、さらに敬語でほんのり冗談めかして伝えたところ、彼は目を丸くして驚き、困惑の色をにじませたまま数秒沈黙したのちに「……ごめん」と言った。重い! 彼はひどく落ち込んで夕食ものどを通らないようだった。