世の中にはまだ、いわゆる「母親像」があり、それによって、ママたちが本音を語りにくくなっている部分もあるのかもしれません。この連載では、2021年6月の人気記事「月20万のシッター代かけても、私が自尊心を優先させた訳」の執筆者で、「フツーとは違うけれど、自分なりの幸福」を追求する文筆家&フリーライターの秋カヲリさんが、ワーママのストッパーとなっているものの正体を見極め、赤裸々に本音を語ります。初回の今回は、秋さんが「わが子をかわいいと思えないのはいけないこと?」に迫りました。

念願のわが子……なのに、涙が止まらなかった

 小さい頃から子どもが欲しかった。新婚旅行から戻ってすぐに子づくりをスタートし、半年後に子宮で命が芽吹いた。念願の子ども、愛しの家族。なのにこうもつらいとは、と嘆きだしたのは妊娠3カ月のとき。出産後はさらにふさぎ込んで、産科の医師から「産後うつ傾向」として薬を処方された。

 「今までと同じように稼げないこと」も大きかったが、それ以上につらかったのは、「今までと同じように働けないこと」だ。

 臨月まで月100本近い原稿を書いてバリキャリロードを爆走してきた私は、育児中心の生活にうまく適応できなかった。私は自分で想像していた以上に仕事が好きで、育児が苦手だった。好きな仕事ができない、育児が楽しいと思えない。その事実は少しずつ、しかし確実に私の自尊心を奪っていった。

 産後入院中の母子同室生活は、正直トラウマになっているほどだ。

 生まれたばかりの息子は遠い星からやってきた宇宙人のようで、どう接したらいいのか分からない。親族や友人が息子を抱いて「生まれたばかりの赤ちゃんって本当にかわいい」とほほ笑むたび、実の母なのにあまりかわいいと思えていない自分を認識し、母親としての自信を失った。

 夜中に泣き続ける息子を抱いていると、逆に私が遠い星に連れてこられたのではないかという気分になり、心細さに震えて泣いた。いつまでこの泣き声と向き合っていればいいのだろう? と。

 忘れられないのは、産後3日目の夜間授乳だ。