2019年から、市民農園の利用がもたらす健康効果について、東京大学と共同研究をスタート。また、働き方改革という時流のなかで、畑作りを「部活動」にしたり、福利厚生の一環と位置づけたりして、法人契約されるケースも増えているという。都市生活者にとって農園は、さまざまな利用メリットを秘めている。

アグリメディア農園事業本部の営業企画 PJリーダー斉藤優子さん
アグリメディア農園事業本部の営業企画 PJリーダー斉藤優子さん

 「シェア畑がアピールできるポイントは多方面にあります。新しいマーケットを作りたいです」。そう話す斉藤さん自身は、同社の拡大に伴って採用が増えた2017年、同社が打ち出す「農レジャー」(農業+レジャーの意味、同社の造語)に可能性と魅力を感じて、全く違う生命保険業界から転職してきた。

 取材した日はくしくも大型台風の接近直前だった。「農園という現場があるので、社内は対策に追われて結構ざわざわしています。そういうところは、リアルな農業に近いと思います」

「農業をもうかる産業にしたい」というビジョン

 同社は、シェア畑以外にも、野菜の収穫体験とバーベキューをセットにした「ベジQ」、里山のオーナー権を販売する「里山シェア」などさまざまなビジネスを展開。「農業をもうかる産業にしたい」というビジョンも掲げ、農業界向けの就職支援サイトなども運営する。「農業は至る所にいろいろな課題があり、うちが取り組んでいるのはまだほんの一部」(管理部広報の多田正大さん)というが、「野菜嫌い克服」を入り口に、シェア畑で農業の片りんにリアルに触れた子どもたちが、日本の農業を変える力となる日は遠くないかもしれない。

取材・文/小林浩子(日経DUAL編集部)