スーパーの野菜は食べないけど、畑で作った野菜は食べる

 そもそも30~40代のファミリー層がシェア畑を利用する目的は、子どもの「食育」が多かった。「野菜がどうやって育っているのか子どもに知ってほしい、野菜の旬を通して季節感を味わってほしい、などですね」と斉藤さん。

 そんな中、気づいたことがあった。「『うちの子はスーパーで買った野菜は食べてくれないけど、シェア畑で作った野菜は食べる』という声が利用者から多く寄せられていたんです」(斉藤さん)

 子どもが野菜嫌いで困っている親は多い。ならばと、一度体系的にプログラム化して、シェア畑の魅力として明確に打ち出してみようということになった。潜在的に持っていた強みの輪郭をはっきりと見せて、浮かび上がらせる試みだ。

 「無理に食べさせるのではなく、『見て、触って、知って、味わって』という野菜と仲良くなれる体験を通して、野菜への苦手意識をなくしてあげたいと考えました」。栄養士兼料理研究家監修の下、プログラムを考案し、小冊子や特設サイトを作成。それに合わせて7月と8月に横浜市内の2カ所のシェア畑で、1日限定の親子参加イベントを開催した。

 「悩んでいる人はやはり多いようで、最寄り駅の駅貼りのポスターとチラシぐらいしか広告を打たなかったにも関わらず、定員の84組を大幅に上回る約300件もの応募が集まりました」

 イベントではまず、トマトやナスなどの収穫を体験。その後、レストランを借りて、野菜のへたや切れ端などを使ったスタンプ遊びでランチマットを作り、収穫した野菜を、お絵描きのようにカレーにトッピングして食べた。参加者からは「普段はトマトを食べられないうちの子が、畑でトマトにかぶりついたので、本当に驚きました」という感想も寄せられたという。

 なぜ畑で作った野菜だと食べられる子どもが多いのだろう。

収穫した野菜をお絵描きのようにカレーにトッピング。「シェア畑 センター北」で実施した「ベジトレ」のイベントでの一コマ。(写真提供:アグリメディア)
収穫した野菜をお絵描きのようにカレーにトッピング。「シェア畑 センター北」で実施した「ベジトレ」のイベントでの一コマ。(写真提供:アグリメディア)