東北芸術工科大学では、デザインスプリントを活用して学生と絵本制作に取り組んだ(写真提供:クックパッド)
東北芸術工科大学では、デザインスプリントを活用して学生と絵本制作に取り組んだ(写真提供:クックパッド)

 その手法を、ワークショップにも導入した。「地方で結果を出してこなくてはいけない今回のような状況でも必ずきちんとしたゴールにたどりつけるのがメリットです。ワークショップでは、小学生向け、大学生向けなど、それぞれの対象者に適した形にアレンジして導入しています。せっかく一緒に取り組むのだから、ちょっとした『我々らしさ』も出したい。食育という観点だけでなく、あのGoogleで使われた手法を基にしたワークショップという点で、そうした話題に興味のあるパパなどからの注目が高まることも期待できます。一般的な食育ワークショップではできない特別な体験を提供できると同時に、IT企業ならではの強みを絵本作りにも生かせているのかなと思います」

味見をさせることも大切な味覚教育

 今後、最大2~6歳まで購読すると想定して、年12冊×5年間分の計60冊を作る予定という(10冊はすでに完成)。小宇根さんの娘は現在小2。「絵本の対象年齢より上の8歳になってしまいましたが、レシピ本として絵本を活用していろいろ作ってくれます」。今や、夕飯の副菜1品を担当する腕前で、すっかり共働き一家の“戦力”となっている。

クックパッドCEO室おりょうりえほんプロジェクトマネージャーの小宇根佳奈さん
クックパッドCEO室おりょうりえほんプロジェクトマネージャーの小宇根佳奈さん

 「調味料も自分で計っていますね。専門家の先生たちは、実は子ども自身に『味見』をさせて、自分で味を調整させることが大切だと助言してくれました。大人の味付けでは、そもそも子どもには濃すぎることがあります。また、味覚教育として、自分で味見をしながら調味料の量を調整し、味の変化を脳に覚えさせていくことが、とても大事だそうです」

 「7歳以降を対象にしたアドバンス版などその後については、希望があれば、また考えたいと思います」。今どきの多様なキーワードに彩られつつ、徹底して等身大のニーズをすくう――。そんな姿勢が満足度につながり、新たな次のニーズを生むのかもしれない。

取材・文/小林浩子(日経DUAL編集部)