タスクではなく、役目で分担

魚返 そもそも、言葉というのは誰かと共有するためのものです。言葉が通じる相手と苦労や喜びを分かち合えるだけで、苦労が半分になったり、喜びが倍になったりする。夫婦で言葉を交わすということは、子育てをシェアしていることそのものといえるのではないでしょうか。

―― なるほど。言葉の力は偉大なんですね。苦労が半分に、喜びが倍になると聞けば、もっと言葉や会話を大切にしなければという気になります。わが家では、育児の「共有」というと喜びの共有ではなく、ついタスク分担の話になってしまうことも……。もっとポジティブにとらえなければいけないと、反省しました。ちなみに、魚返家は育児におけるタスク分担をしていますか?

魚返 タスクをリスト化して分担するほどガチガチに固めていませんが、なんとなく役目で分けていますね。うちは、夫婦ともにタスク化するのが苦手なんですよ。タスクという言葉が出てくると、管理という印象がどうしても強くなる。きっちり作り込まれたプランに沿って何かをやるっていうのが得意じゃないので、僕たち夫婦は(笑)。タスクが目の前に現れた瞬間に、「うわっ、めんどくさい」と思ってしまい、やる気が起きなくなってしまうんですよ。そんなふうに思うくらいなら、とりあえず中に飛び込んでみて「結果的にめんどくさかった」という方が断然いい。

―― 一般的に、共働きをうまく回すにはタスク化が大事という話が多いので、「タスク化しないほうがうまくいった」という話はとても新鮮でした。タスク化ではなく、役目で分けているということですが、具体的にどんな役目があるのでしょうか。

魚返 特に、夫婦で役目を分けたというよりも、僕が勝手に「わが家の書記」と、名乗っているだけなのです(笑)。

―― わが家の書記? 家族に書記がいる、という発想が面白いですね。

魚返 仕事柄、文章や絵を書くのは自分のほうが得意だったことから、赤ちゃんのときに食事や排泄の記録をつける育児ノートから始まり、今では保育園の連絡帳への記入が日課になっています。絵コンテなども仕事で描くことも多く、絵が得意なので子どもにせがまれて似顔絵を描くことも増えました。この業務内容を表すのに、「わが家の書記」という表現が一番しっくりきた、という感じです。最初から、「書記として頑張るぞ」と張り切っていたわけではありません。

「わが家の書記」として書いていた赤ちゃん時代の体調記録。「B砲の頻度とリキッド度が前日より増しており」などと、「わが家スラング」もさく裂!
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書記の役目の中で、いちばん苦手な連絡帳のコメント欄。自分が書き手なのに、「僕」ではなく「パパ」と書くことにモヤモヤするという
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―― 確かにタスク化されるよりも、ざっくりとした役目で業務を分けたほうが、楽しくかつ主体的に育児に関われそうですね。わが家でもそのやり方を取り入れてみたいと思います!