習い事の効果測定はPDCAサイクルの発想で

―― なぜでしょうか。

永田 習い事はあくまで、「どんな子に育てたいか」という目的に対する手段でしかありません。その目的が達成されていない場合は、続ける意味はないと思います。習い事の「する・しない」「続ける・続けない」問題、私はこんな流れで行動・判断するようにしています。

1 目的を考える

どんな子に育てたいか。そのために、どんな力を身に付けさせたいか。
例:(水泳)体力が付く、溺れたときに自分で命を守れる(アート)表現する力が付く

2 体験させる

見学だけでは判断できない。必ず「まずやらせてみる」

3 チェックする

子ども自身の感想よりも表情に着目。難易度が高過ぎたり低過ぎたりして、自分の子のレベルには合っていないと感じても、本人が楽しそうにしていたらOK。
先生の資質も必ずチェック。ポジティブな言葉がけをして、子どもの良い面を伸ばそうとしてくれているか、学ぶことの楽しさを伝えているか、など

4 判断する

その習い事を正式にスタートするか否か、継続するか否かを意思決定する

―― なるほど、PDCAサイクルを回すようなフローで意思決定されているのですね。わが家も、一応目的を持って習い事をさせているつもりなのですが、そこまで徹底できていないかもしれません。例えば、水泳は、うちも「体力を付けさせ、溺れたときに自分で命を守らせる」ことを目的として始めたはずなのですが、子どもが真面目に泳いでいないことにイライラして、「そんな態度なら、やめてもいいんだよ」と脅してしまったことも……。

永田 本来の目的ではなく、「取り組むときの態度」が気になってしまうのですね。

―― あ、確かに、目的がすり替わってしまってますね! 今、指摘されるまで、気づきませんでした。

永田 お子さんの態度に注目するというのは、チェックポイントとしては悪くないと思います。ただ、小さいうちは、真面目・不真面目よりも、楽しそうに取り組んでいるかどうかを、わが家では重視しています。もし、「全然楽しめていないな」と感じるようなら、潔くやめさせますね。

期限を区切り、一緒に目標を設定。小さな達成感がモチベーションに

―― 基準が明確ですね。でも、最初は楽しそうでなくても、続けていると、だんだん楽しくなってくることもあるのではないかと思うと、なかなか判断がつかないかもしれません……。

永田 確かにそういうことはありますね。実は、うちの息子も水泳を嫌がっていた時期がありました。そこで、「1カ月だけ頑張ってみよう。それでも好きにならなかったらやめよう」などと期間を区切り、「プールをやった後は一緒にアイスを食べよう」と、小さなインセンティブを提示し、「もしバタ足ができるようになったらかっこいいな」と、息子と話し合った上で一緒に目標を設定したら、1カ月もたたずに、「プール好き」になりました。頭ごなしに「続けなさい」と諭すのではなく、子どもと一緒に目標を決めたのがよかったのかもしれません。小さな達成感は何よりのモチベーションになりますから。

―― なるほど、モチベーションアップという面でも、仕事のスキルが子育てにいきる部分は多そうですね。ぜひ詳しく伺わせてください。(下編に続く)

取材・文/児玉真悠子 写真/鈴木愛子

永田 豊志(ながた とよし)
ショーケース代表取締役社長、知的生産研究家
九州大学卒。リクルートで新規事業開発を担当。出版社や版権管理会社などを経て、1996年に現ショーケースを共同創業。2015年に東証マザーズ上場、2016年に東証一部上場へと導いた。2019年1月から現職。図解思考、フレームワーク分析などビジネスパーソンの知的生産性研究にも取り組んでおり、『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』(SBクリエイティブ)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(KADOKAWA/中経出版)など著書多数。