親は、苦手を克服させなければ、と頑張る必要はない

千葉 「この運動は苦手かもしれない」と思ったら、普段の遊びの中で補ってあげるといいでしょう。「ボールを投げるのが苦手だな」と思ったら、公園遊びのときに、ボール遊びを取り入れてみる。その運動を楽しめるように働きかけてあげれば、それで十分です。

―― 親は、苦手を克服させなければと頑張る必要はない、ということですね。

千葉 はい。苦手だからこそ、「まず楽しめるようにしてあげる」ことが大切です。子どもって、親と一緒に何かやるのが好きなんですよね。だから一緒に取り組めば、どんな運動でも楽しめるようになると思います。

 「一緒に」といえば、わが家では子どもに対して、運動に限らず何に関しても、「一緒に頑張っていこうね!」と言葉掛けをするようにしています。

―― 温かくて、すてきな声掛けですね。なかなかそうした言葉は出てこないかもしれません。

千葉 なぜ私がこの言葉掛けを大事にするようになったかと言うと、指導してくださった小出義雄監督の影響が大きいのです。小出監督の指導法は「ほめる」ことが基本で、できない時でも叱られるということがありませんでした。

 練習はすごくハードで、思うように走れないこともありました。そのたびに、落ち込んでしまう私のところに、小出監督がトコトコってやってきて、「千葉ちゃん、一緒に頑張っていこうね」って励ましてくれるんです。それが私、すごくうれしくて。明日また頑張ろう、と気持ちを切り替えることができました。

 もし、上から目線で「なんでできないんだ!ちゃんとやれ!」などと言われていたら、きっと反発してしまっていたでしょう。だって、一生懸命頑張っているのに、できなかったわけなので。ですから、自分の子どもたちにも上から目線ではなく同じ目線に立ち、「一緒に頑張っていこうね」と励ましながら、何事も「一緒に」取り組んでいきたいと思っています。

―― 具体的にどんな場面で、お子さんにそう声掛けをしているのでしょうか。