今、ビジネスパーソンが知っておきたいキーワードの1つが「アンコンシャスバイアス」という言葉。直訳すると「無意識の偏見」という意味で、最近、企業研修などで盛んに使われるようになった言葉です。

4回目は、「乳児用液体ミルクプロジェクト」の発起人、末永恵理さんへのインタビュー後編です。すでに液体ミルクを発売している江崎グリコ、明治に続いて、雪印メグミルク、森永乳業も参入に向けて動き始めました。また11月29日には紙パックに付ける赤ちゃん用の吸い口も発売。利便性が高まることが期待されます。末永さんは、「国や大企業は変えられない」といった「無意識の思い込み」をどう飛び越え、子育て当事者にしか分からない声をどう伝えたのか。彼女が取った「人を巻き込むための戦略」に迫ります。

事態が大きく動いた熊本地震

日経DUAL編集部(以下、――) 前回は、オンラインで1万件もの署名を集め、行政やメーカーに届けた活動を伺いました。その後は、どんな活動をされていったのですか。

末永恵理さん(以下敬称略) 液体ミルクの国内販売に向けて「法律を変えてもらう」ための働きかけに力を入れました。「食品衛生法に液体ミルクという項目がないから製造できないけれど、法律的に作ってはいけないわけではない」という状況を整理する手立てを考え、2015年秋に、経済産業省の「グレーゾーン解消制度」(規制の適用の有無を確認できる制度)の窓口へ相談に行きました。

そこの方は親身になって、行政のどの窓口へ行くべきか、どんなポイントを踏まえれば意⾒が通りやすいのかといったことをアドバイスしてくださり、戦略を一緒に考えてくれました。その上で、内閣府の「規制改革ホットライン」に意見を伝え、担当の方に署名を渡したところ、「検討を進めていきたい」と前向きな回答をもらいました。

―― その後、2016年4月に熊本地震が起こります。この頃から、世間の液体ミルクへの関心が高まり始めましたね。

末永 熊本地震を機に、ママたちの調乳に関する不安が高まり、1万件だった署名が、わずか3日間で2万4000件にまで増えました。ツイッター上でも、液体ミルクに関するツイートが多く見られるようになったんです。そうしたニーズを踏まえ、もう一度、内閣府の防災部門に署名を届けに行く準備をしていたところ、当時衆議院議員だった小池百合子さんが、フィンランドから液体ミルクを取り寄せ、被災地に寄付することを知りました。

国内販売解禁後に末永さんが購入した米国の液体ミルク。飲み口を付けて直接赤ちゃんに飲ませることができる
国内販売解禁後に末永さんが購入した米国の液体ミルク。飲み口を付けて直接赤ちゃんに飲ませることができる

 そこで、小池さんの事務所に、「署名を直接届けにいってもいいですか?」とお電話し、寄付に関する記者会見の場へ伺うことにしたんです。国内での製造基準がなかった当時は、液体ミルクを赤ちゃん用として輸⼊販売することも認められていなかったのですが、災害時は被災地に必要な物資ということで特例が適⽤されていました。

―― 政治家にもアプローチしたのですね。小池さんとは、直接お話しされたのですか?