子育てに潜むアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)について、『不道徳お母さん講座』(河出書房新社)の著者、堀越英美さんに、子育て中の日経DUAL編集Aと、1男1女を育てたライターBが疑問をぶつけます。おもちゃや文学に隠れたジェンダーギャップについて指摘した前編中編に続き、今回のテーマは「男の子らしさ」と「母親らしさ」について。ステイホーム期間中、共働きなのに母親に家事・育児の負担が偏り、不平等感を覚えた人もいたのではないでしょうか。堀越さんは「母は自分を犠牲にして奉仕すべき」という風潮があると指摘します。

堀越英美さん(以下、敬称略) 長女は12歳、次女は8歳。自由に育ててきたはずの長女がピンクにしか興味を持たなくなったことをきっかけに『女の子は本当にピンクが好きなのか』を執筆。

編集A(以下、A) 長女は6歳、次女は2歳。ピンクが嫌いで青い服ばかり着たがる長女に不安を感じたことから、自分が「理想の女の子像」に縛られていたことに気づく。

ライターB(以下、B) 1男1女を育てた経験あり。「男だから」「女だから」は家庭内で封印してきたつもりなのに、長女は文系、長男は理系に進学。

「男が泣くのはみっともない」という空気はまだ残っている?

A 前回までに女の子を取り巻くアンコンシャス・バイアスについて考えてきましたが、男の子についてはどうでしょうか。最近では「男の子だから泣いちゃダメ」と言う人も減ってきていると思いますが、私が知っている男の子のお母さんは、息子に「男なんだから、女の子のことを守ってあげなさいよ」とよく言っています。男の子を育ててきたBさん、どうですか?

B 「泣いちゃダメ」は、言わないようにしてきました。でも、もしも息子が女の子を守っているのを見たら、すごくうれしいと思ったはず。だから男の子は強くあれと、心の中では思っているんでしょうね。

堀越 たとえ親が言わなくても、男の子同士の同調圧力があるかもしれませんよね。泣くのはみっともないと。

男の子は「強くなること」を無意識に求められている可能性も。画像はイメージ
男の子は「強くなること」を無意識に求められている可能性も。画像はイメージ

B 過去のマンガやアニメのヒーローものなども、男とはそうあるものだという暗黙のメッセージを発信してきたかもしれません。

堀越 弱くてもいいんだ、何かを守れなくてもいいんだ、という男の子のロールモデルがあればいいけれど、ヒーローになれなかったときに受け止めてくれるものがないときついですよね。