子育てに潜むアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)について、『女の子は本当にピンクが好きなのか』(河出文庫)の著者、堀越英美さんに、子育て中の日経DUAL編集Aと、1男1女を育てたライターBが疑問をぶつけます。おもちゃに隠れたジェンダーギャップについて指摘した前編に続き、今回のテーマは「文学」です。

堀越英美さん(以下、敬称略) 長女は12歳、次女は8歳。自由に育ててきたはずの長女がピンクにしか興味を持たなくなったことをきっかけに『女の子は本当にピンクが好きなのか』を執筆。

編集A(以下、A) 長女は6歳、次女は2歳。ピンクが嫌いで青い服ばかり着たがる長女に不安を感じたことから、自分の「理想の女の子像」に縛られていたことに気づく。

ライターB(以下、B) 1男1女を育てた経験あり。「男だから」「女だから」を家庭内で封印してきたつもりなのに、長女はピンク・プリンセス好き、長男は乗り物・戦い好きに。長女は文系、長男は理系に進学。

女の子の理系進学率が高まらない理由

堀越 日本の理系学部進学者に占める女子学生比率の低さは、前回話したように子どもの頃から遊んできたおもちゃの影響もあるかもしれませんが、それ以上に、男性が多いところに女子が飛び込んでいくにあたっての、ハードルの高さがあると思います。

 学力が同じレベルの女子校と共学校とで、女子の理系への進学率を比べると、女子校の女子よりも共学校の女子のほうが理系進学率が低いといわれています。共学の理系進学クラスは男子ばかり。それがイヤだという気持ちが女子の中に芽生えても不思議ではありません。女子校ならその点安心感があります。

B 共学校にも数学や物理がとても得意な女子は当然いますよね。

A 私は共学高校の理数科出身です。数学や物理がとてもできる女の子はいて、男子からも女子からも尊敬されていました。でも、モテるのは、また違うタイプでした。成績がそこまでよくなくても、おしゃれでかわいい子たち。共学にいるとそういうキラキラした子がうらやましくなっちゃうところはあったと思います。

堀越 「愛されるように」「嫌われないように」ということを言い聞かされて育っていると、「男性に嫌われるリスク」を高く見積もりますよね。だから学部選びや職業選びにあたっても、「女のくせに生意気だ」と言われるリスクの小さそうな、女性が多いところを選ぶ。我慢して耐え忍ぶ女性を理想像として刷り込まれてきたこともあって、自分が本当に何をやりたいのかを突き詰めて考えないまま大人になってしまう人もいたと思います。

「女のくせに」と言われない場所を無意識に選んでいる?画像はイメージ
「女のくせに」と言われない場所を無意識に選んでいる?画像はイメージ