資格取得、転職、独立など、子育てをしながらも「キャリア自立」へと一歩踏み出した人たちへインタビューするこの連載。今回登場するのは、育休中に北海道に移住したのを機に、起業を決断したママ。移住から起業に至るまでの悩みや決断の背景について前後編で紹介します。

萩原美緒さん
コロッケ代表

クックパッドでコーポレートブランディング、採用責任者、海外事業部のオペレーションを歴任。第2子育休中の2016年10月に札幌市へ移住。2017年4月からリモートワークで職場復帰。復帰後は子会社で新規事業の責任者を務める。「北海道の生産者と一緒に仕事がしたい」という思いから2018年11月に退職。2019年2月、食品製造販売会社のコロッケを設立。子どもが夕食を楽しく待つことができる、北海道産素材を使った無添加の食前アイス「Pocco」を2020年7月に発売し、働く親を中心に人気商品となっている。

萩原美緒さんの「キャリア自立」のポイント
○ 前例にとらわれず、自分のやりたいことを実行する
○ ユーザーに提供したい「体験」を徹底的に考え抜く
○ 常に誠実に働くことで新しい道を開く

育休中にお試し移住、北海道の魅力にハマる

日経DUAL編集部(以下、――) 7月に発売した食前アイス「Pocco(ぽっこ)」が働くママたちを中心に話題となっています。子どもの小腹を満たすのにちょうどいい、食べきりサイズです。前職のクックパッドでは約10年間キャリアを積み、第2子育休中の2016年に東京から札幌市に移住しました。どんなきっかけがあったのでしょうか?

萩原美緒さん(以下、敬称略) 第2子の産休に入った頃、夫が共同創業した会社を退任することになりました。長女は未就学児だったので、夫と「今東京に住んでいなくてはいけない理由はないよね」という話になりました。そこで「3カ月限定で好きな場所に住んでみよう」と、夫が趣味のスキーで訪れたことのある北海道のニセコ町に仮移住することにしました。2016年6月に東京で次女を出産し、7月からコンドミニアムを借りて暮らし始めました。

―― 期間限定の移住とはいえ、すごい行動力ですね。実際に住んでみていかがでしたか?

萩原 夏の北海道の野菜のおいしさに驚きました。北海道の食材にほれて、道内のチーズ作り体験や、酪農家さん、農家さんの産地販売所などを家族で訪れて、可能な限り生産者さんに会いに行きました。自分の手で野菜や乳製品を作る生産者さんの生き方は「なんて格好いいんだろう」と会社員である私にとっては衝撃でした。それが「生産者さんたちが生き生きと活躍している北海道に住みたい」という気持ちにつながったのです。

 移住したことで生活の質が大きく上がりました。北海道の食材を使った夕食を毎日家族で囲み、全員で過ごす時間を楽しむことができるようになりました。「東京ではこんな生活はできなかったね」と夫と話し合い「人生一度きりだし、移住してみるか」とそのまま北海道に住むことを決めました。東京へのアクセスなどを考慮して札幌で住居を探し、2016年10月から本格的に移住しました。