「雇ってもらっている」下から目線に気づいた

 私が今も急な出張が入ったときにSOSを出す、シンガポール在住の日本人ワーママの大先輩も、「私自身多くの人に助けてもらったから、今度は私が次世代の働くママを手伝う番」と言ってくださる。

 昔、「女の敵は女だから気を付けてね」と言われたことがありますが、私は女性に助けられ続けて今まで乗り切っています。

 例えばBBCの同僚や上司。私が妊娠・出産した時のサポート体制は(男女かかわらず)素晴らしいものでしたし(第1話)、社内にはGlobal Women in News (GWiN) というグループもあります。セミナーを開催したり、トレーニングをアレンジしたりしてくれるグループで、最近は例えば、更年期症状と仕事の両立についてのセッションが行われていました。

 その中でも「Mentor/Mentee」(メンター/メンティー)というプログラムは、社内で直属の上司とは別の人が1年間キャリア相談に乗ってくれるという制度で、驚くほど偉い人たちも参加しています。

 でもGWiNはイギリスの本社にベースを置くグループなので、私自身は時差の関係でセミナーに参加しづらいな、と感じていました。だんだんイベントのメールを受け取っても、開催される時間帯も見ずに「どうせ時差で参加できないし」と削除するようになってしまっていたときのこと、私のロールモデルの1人でシンガポール支局に在籍するカリシュマ・バスワニ記者が「GWiNのアジア版を作ろう」と言い出したのです。

 「女性社員同士助け合おう」と口癖のように言っている彼女ですが、2人のママで、私以上に出張の多い多忙人。その彼女が、ロンドンとシンガポールの上司にGWiNアジア版の設立許可を取ったとき、私は彼女と同じ会社で働けていることを心底感謝しました。

キャリアや育児の相談に乗ってくれるBBCの同僚たち。左からアメリカ人のモニカ、パキスタン系カナダ人のサイラ、私、イギリス人のアナ、インド系シンガポール人のカリシュマと、多国籍なメンバー
キャリアや育児の相談に乗ってくれるBBCの同僚たち。左からアメリカ人のモニカ、パキスタン系カナダ人のサイラ、私、イギリス人のアナ、インド系シンガポール人のカリシュマと、多国籍なメンバー

 私は人生の半分以上を海外で過ごし、日本企業で働いたこともありませんが、日本で教育を受け、上下関係を大事にする日本の常識で育てられました。会社の人事部に連絡して、「GWiNっていい制度だけど、アジアで勤めてる人のことも考えてよ」と言う勇気はありません。

 でも言っていいんだ、言うべきなんだと気付かせてくれた。

 そして私は今まで、「ずっと憧れていたBBCに雇ってもらっている」という下から目線だったことにも気付きました。