「令和」を伝えた瞬間、何かが吹っ切れた

 南北首脳会談の現場キャスター業は初めての体験、当日は心臓が口から飛び出しそうなほど緊張しましたが、2時間半の特番中、プロンプターなしで話し続けられた時の安堵感、達成感は言葉では表現しがたいものでした。

 その後、米朝首脳シンガポール会談、インドネシアの津波、クライストチャーチのモスク襲撃事件などの現場からキャスター業を担当し、経験を積みました。

 そして2019年4月30日と5月1日、日本の歴史的瞬間である、2世紀ぶりの天皇陛下生前譲位を世界に伝える役を任されました。

 平成から令和になるその瞬間、私の中で何かが吹っ切れた気がします。

日本にて。メモを見ながらレポートの準備をする筆者
日本にて。メモを見ながらレポートの準備をする筆者

 名誉ある仕事を任された緊張感よりも、心から楽しいという気持ち。そして、その後の私の対応にも、大きな変化が現れました。

 2014年、生後数週間の娘に授乳しながら「行きたい」と言った香港のデモ取材。その時に代わりに派遣された後輩記者の活躍を見た時、私の正直な気持ちは「悔しい」でした。

 しかし、同じ香港での今年のデモの取材は、「できれば行きたいけれど、父の日のビスケット作りを娘と約束しているし、行けなくてもいい」と思う心の余裕ができていました。

 香港に派遣された後輩記者がオンエアで登場した時、今回は心から祝福する私がいました。「現場に真っ先に行きたいと言わないなんて、私の記者根性はどこに行った?」と思う半面、人間として少し成長できた気がしてうれしかった瞬間です

 日本では産休・育休後に仕事復帰をしても「マミートラック」があり、なかなか活躍できない、させてもらえないという友達の苦労話を聞くと、本当に切なくなります。

 でもBBCも、最初からワーママのサポート体制がしっかりしていたわけではありません。その背景には、数十年間にわたり、現場が中心となって、男女のみならずさまざまな意味でのダイバーシティーを推進してきたBBCがあります