働くママの多くが一度は直面する「罪悪感」。子ども2人を育てながら、日本人で初めて、BBCワールドニュースでキャスター・レポーターを務めている大井真理子さんは、どう乗り越えてきたのでしょうか。この連載では、キャリアと育児を両立するうえでの葛藤や悩み、海外での子育てで感じたことなどを、語っていただきます。

息子が初めて話した文章が「ママはお仕事」

 「一生くん、ちょっとお腹の調子が悪いようです」

 2018年4月、韓国と北朝鮮の間の軍事境界線から南北首脳会談について数時間にわたる中継を終えた瞬間、スマホを開くと目に飛び込んできたのは、息子のオムツの中身の写真でした。

 当時息子はまだ保育園に行っておらず、急に入った出張だったため、大先輩のワーママに急遽ベビーシッターをしてもらっていました。私のニュース脳が、母の脳に切り替わる瞬間です。

 今年7月、同じ場所から今度はトランプ大統領の歴史的な北朝鮮訪問の瞬間を中継していました。今回は週末の出張。二日連続で、ママ友が子連れで遊びに来てくれていました(前回「誰かに頼ることは手抜きじゃない」)。

 でも前回と違ったのは、息子が2歳近くなり、「ママがいなくなるのが嫌」という感情を持ち始めたこと。前日ママ友に引き渡す時にギャン泣きされていたため、不安半分で出張に旅立っていました。

 でもその中継が終わった時に見た私の携帯には、オムツでも泣き顔でもなく、楽しそうな写真がたくさん送られてきていました。

 中継もうまくいき、ほっとして出張から戻った日、息子が初めて単語ではなく、話した文章は「Mama at work.(ママはお仕事)」。誇らしい半面、罪悪感もありました。