家事の外注で、母親業がおろそかになる?

 シンガポールは共働き家庭が多いため、国の政策もあり、ヘルパーさんを雇うことが一般的です。でも私には抵抗がありました。ただでさえ、子どもたちを1歳前から保育園に預けているわが家。罪悪感がないと言ったら嘘になります。育児や家事を「外注」することに対して、「母親業をおろそかにしている」という意見も一理あるのではないか、と思っていたこともあります。

 ヘルパーさんを雇うか迷っていた頃、「育児を任せすぎて、子どもが転んだとき、母親ではなくヘルパーさんに泣きついた」という家庭の話を聞いたときは、どんなに大変でもどうにか自分たちでがんばろうと思いました。また、街中で5歳くらいの子が自分の家のヘルパーさんを指して「あいつはうちのメイド」と偉そうに話す姿を見たこともあり、自分の子には絶対にそうなってほしくない、と思いました。

 物理的なハードルもありました。シンガポールの法律上、ヘルパーさんは住み込みでなくてはいけないため(通いは違法)、狭いわが家にもう1人住むスペースが必要になる。ヘルパーさんに物を盗まれた、子どもを虐待されたなどの話を耳にすると、やっぱり怖いと感じました。

 また、ヘルパーさんたちの多くは、フィリピンやインドネシアなどの出身で、母国に家族や子どもを置いて働きにきています。給料は月5万~6万円が相場(日本円換算、食費・光熱費・税金などは別途雇い主が払います)。このお金で彼女たちは母国の家族を支えています。「母国で看護師をするより、シンガポールでヘルパーをした方が稼げるんです」と言う方にも知り合いましたが、それでも、やっぱりどこか申し訳なく、お願いすることに抵抗を感じていました。

 それでも決断したのは、同僚のママが実績のあるヘルパーさんを紹介してくれたからです。