日本人で初めて、BBCワールドニュースでキャスター・リポーターを務めている大井真理子さん。シンガポールで働きながら妊娠・出産を経験し、現在は保育園児二人を育てる母親でもあります。キャリアと育児を両立する上での葛藤や悩み、海外での子育てで感じたことなどを、語ってもらいます。

16歳のオーストラリア留学で人生が変わった

 初めまして。英国放送協会BBCの国際ニュースチャンネル、BBCワールドニュースでキャスター・リポーターをしている大井真理子です。37歳。4歳の娘・美空と1歳の息子・一生の母です。

 最初となる今回は、私の仕事と、私が「ワーママキャスター」になるまでの経緯を少し紹介させてください。

 所属はBBCのシンガポール支局。普段は平日の朝に放送している『ニュースデイ』や『アジアビジネスレポート』で、日本を含めアジア全域のニュースをスタジオから伝える仕事をしています。突然の出張も多く、毎日がドタバタ! 夫や周囲の協力を得て、なんとか毎日を過ごしています。

テレビに映っているのが私。長女は母親の仕事を理解し始めています
テレビに映っているのが私。長女は母親の仕事を理解し始めています

 BBCに入社したのは2006年12月、24歳の時。常勤のスタッフがクリスマス休暇を取り、人員不足をカバーするため、給料が不安定なフリーランスのプロデューサーとして雇用されました。

 実は、16歳(高校1年)でオーストラリアに留学するまでは「玉のこし結婚が夢」と公言してはばからなかった私。当時はやっていた「アムラー」やルーズソックスに憧れ、ひたすらファッション、お化粧、カラオケで歌う新曲だけに興味津々の日々でした。

 しかし、留学先で偶然見たBBCのドキュメンタリーに感動し、「記者を目指そう!」と心に決めました。以来、ずっとBBCに憧れていたので、念願かなった、夢の仕事です。正社員になりたい、レポートさせてもらいたい、キャスター業もやらせてほしい。当時の私の人生目標はキャリアアップばかりでした。

 そんな私に、入社当時の女性上司は、「今のうちから、将来子どもを産みたいかどうか、人生設計を考えたほうがいい」とアドバイスしてくれました。「この仕事はニュースを追いかけ続けていたら、あっという間に時間がたってしまい、ふと気付いたら『子どもを産みたかったのに遅かった』となりかねないから」と。

 今振り返ると、本当にありがたいアドバイスだったと思います。けれど、憧れのBBCに入社できて舞い上がっていた当時の私は「ふーん」程度のリアクション。昼夜を問わず、ひたすらニュースを追いかけていました。

 シンガポールでキャスター業を任されて数年がたった頃、ニューヨークとロンドンへの短期転勤に応募して合格し、現地のスタジオで半年間ずつキャスター業を任されることが決まりました。私にとっては、新天地でキャリアアップできる、またとないチャンス。プライベートでは4年間付き合った彼がいましたが、一向にプロポーズしてこないので、転勤を機に別れを考えました。

 ところが、そんな私に、思いがけない出来事が待っていたのです。