キャリアアップのチャンスと妊娠が重なった

 ニューヨークでの勤務を終え、ロンドンに赴任して間もなく、長女を妊娠していることに気付きました。

 実は、別れを切り出した直後に彼はプロポーズをしてくれていました。私は返事を保留にしたままでしたが、急いで籍を入れることに。憧れていたロンドンの本社で働き始めたばかりだったので、上司に妊娠をどう伝えればいいかと迷いました。

 また、アジアの朝の番組に合わせて、ロンドンでは現地時間の深夜勤務を担当しており、「赤ちゃんへの影響はないんだろうか」という不安もありました。日本の友達から「仕事を辞めようと思わなかったの?」と聞かれたこともあります。けれど、せっかく手に入れたやりがいのある仕事を、諦めたくなかった。その後も一人イギリスに残って勤務を続けました。

働いていても、母親業はできると信じて

 時代の影響もありますが、私の母も祖母も専業主婦でしたし、日本で通っていた学校の友達の母親も、ほぼ全員が専業主婦。「働くお母さんは母親業がおろそかになる」という偏見を耳にしたこともあります。私自身、中学生時代は「玉のこし結婚」から専業主婦になることを目指していました。

 でも、留学先のオーストラリアのホストマザーは「働く母」でした。そして、その子どもたちがきちんと育っていることを目の当たりにし、考えが変わりました。

 またBBCには、直属の上司をはじめ、数多くの先輩ママがいます。妊娠や出産でキャリアをあきらめるような風潮がありません。

 妊娠中に、社内で募集された特派員の仕事に応募したことがあります。応募書類に「産休に入るので、今すぐ特派員が必要であれば、私を選ばなくて構いません」と書いたところ、「面接をしてあなたが一番の適任だと判断すれば、あなたにこの仕事をあげるのが会社のルールです」と上司に怒られました。その仕事にはベテラン記者が応募していて、私には特派員の仕事は回ってきませんでしたが、BBCの「働く父母」へのサポート体制の手厚さに気付かされました。

 ところが、娘を出産すると、想像とは少し違う世界が待っていました。

妊娠中も仕事を続けました(写真は第2子妊娠中)
妊娠中も仕事を続けました(写真は第2子妊娠中)