英国放送協会BBCのシンガポール支局で日本人初のキャスター・レポーターを務める大井真理子さん。東京オリンピック現地リポーターに内定した矢先、第3子妊娠が分かりました。BBCの同僚や先輩は、そんな大井さんにどのようなアドバイスをしたのでしょうか。

赤ちゃんは、この世界が続いていくべきだというメッセージ

「第3子妊娠」
「誰が?」
「もしかしてマリちゃん?」

 友達と私の間でそんなメッセージのやりとりが行われたのは、香港出張から帰ってきた直後の2月上旬のこと。

 娘が5歳、息子が2歳になり、やっと自分のことを気にかける余裕が出てきたと思っていた矢先でした。

 息子が「赤ちゃん」から「小さい少年」に成長していく様子を見ていて、「新生児懐かしいね」「オリンピックが終わったら3人目考えようか」「でもお金かかるし無理だね」などと夫と話していたところでした。

 東京五輪でリポーターを務めることが内定した私。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて1年後への延期が決定しましたが、予定通り開催されていれば、妊娠31・32週で取材することになっていました。

 実は妊娠が分かったとき、医師に聞いた最初の質問は「オリンピックは休めないんですが」でした。ギリギリ移動可能な期間だと言われ、ほっとしましたが、マタニティー服や新生児グッズは全部友達にあげちゃった!という焦りや、シンガポールの高い出産費用や学費をどう払うんだろうという不安も。

 でもそんな時、ツイッターのフォロワーさんが「赤ちゃんはこの世界が続いていくべきだという神様からのメッセージ(A baby is God's opinion that the world should go on.)」というアメリカの詩人、カール・サンドバーグの言葉を紹介してくれました。そして娘は「妹だったら美空(みく)がオムツを替えてあげるし、お風呂も入れてあげる!」と大喜び(「弟だったら?」と聞くと「ママとパパがんばって」と言われ、息子はすでに嫉妬気味なので、若干の不安は残りますが)。

 授かった新しい命を大事に育てながら、仕事との両立を頑張ろう。

 そう思ってはいても、ワーママが多いBBCでも私のロールモデルはみんな2人のママ。数カ月に一度は行かせてもらえるようになっていた速報出張は諦めないといけないのかな、目指していた東京特派員の夢はもう不可能だろうか、などという不安が心をよぎりました。

 まずは3人の子を持つ同僚たちに片っ端から「どうやって両立しているの?」とメッセージを送りました。

長女の美空が書いた新しい家族の絵
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