「集団皿回し」からの脱却が必要

 一般的な企業で課長クラスに昇進する年代は、おおむね30代後半~40代。今この年代にあたるのが、「失われた20年」と言われる不景気の時代に就職した世代の人たちだ。当時、企業が新卒採用を手控えたことにより、「多くの企業で、課長職を担う30代後半~40代が不足している」と柴田さんは指摘する。

 人手不足に加えて、働き方改革により効率化が重視され、上からは結果を強く求められる。「一人ひとりがいくつもの仕事を必死に回し、自分がミスをしないように気をつけるのに精いっぱいで、ほかの人を見る余裕がない。私はこの状態を『集団皿回し』と呼んでいます」

 柴田さんは、こうした「集団皿回し」状態から抜け出すことが、疲弊する現場を救い、ブラック上司を生まない環境づくりにつながっていくと提唱する。

 「そのためには、今の仕事のなかから『何かをやめる』勇気が必要です。特に、新しいことを始めるときは、同時に何かをやめることをセットで考えないと、優秀な人材が離れてしまい、組織にとってもダメージです。上司が率先して姿勢を示すことが重要です」

ロジカルに伝えるスキルを磨いてムダなやりとりを防ぐ

 現場の一人ひとりができることは、「生産性を高めるために、身の回りの改善ポイントを見直すこと」とアドバイスする。

 「無駄なやりとりが発生しないよう、メールやメモは分かりやすく簡潔に。会議の前にはあらかじめ議題を伝えておく、資料の枚数を減らす……なども生産性向上に役立ちます。すでにやっている場合は、ブラッシュアップさせていきましょう」

 ロジカルに話すスキルを磨くことも大切だ。「例えば、上司に意思決定を促す場合を想定してみましょう。問題の背景は何か、意思決定にあたって論点は何か、どういう選択肢があり、おすすめは何か。こうした情報を部下から上司伝えることで、上司の意思決定がスムーズになります。ロジカルスキルを磨くことは、ブラック上司対策だけでなく、仕事の効率化やスキルアップにもつながりますので、ぜひ試してみてください

文/西尾英子 写真/洞澤佐智子 イメージカット/PIXTA