平社員時代に優秀だった人が、上司になった途端…

 また、やる気や熱意が空回りし、部下の仕事を増やしてしまう上司も、ある意味ブラックな存在といえる。なかには、「平社員時代は周りから好かれていた『仕事のデキる人』が、昇進した途端、『一緒に仕事したくない上司』に変わる」パターンもあるという

 「プレーヤからマネジャーへと役割が変わったにもかかわらず、本人の意識が変わっていないため、部下を育てて任せるよりも、自分が活躍したいという気持ちが強い。そのため、チームの手柄を自分の手柄のように扱ってしまい、部下からすれば、『上司に利用されているのでは?』と不満を感じてしまいます」

 部下と上司との行き違い。その背景には、マネジメントに求められる役割の変化がある。

 「これまで多くの日本企業では、上司の指示に従って部下がその通りに動く、トップダウンの形式を取ってきました。部下の個性や人数にかかわらず、同じ指示のもとで動くため、アウトプットも画一化されます。みんなが同じものを求めるこれまでの時代はそれでよかった。

 しかし今は、顧客の嗜好性やニーズに合わせたきめ細かなサービスと、スピード感ある対応が求められています。そうしたなかで他社との競争に勝つには、現場で直接顧客に接する社員がある程度の決定権限を持ち、主体的に考えて動くことが重要。上司の仕事は、これまでの命令型から、部下が主体的に動けるための環境を整え、個々のスキルアップを促し、サポートしていくことへと変化しつつあるのです。それに気がつかず、自分が育てられた通りのやり方で部下に接しようとする上司は、部下とすれ違ってしまうでしょう」

修羅場を経験させていい人は限られる

 さらに、こうした熱血上司のなかには、「修羅場を経験してこそ成長する」という信念から、部下にも修羅場を経験させようとするケースも。しかし柴田さんは「修羅場を経験させてもいいのは、トップまで上り詰める覚悟がある部下だけ」と言い切る

 「特に子育て中の社員の中には、自分のペースで穏やかに仕事をしたいという人もいるでしょう。上司は部下のキャリアプランを把握して、その人に合ったハードルを用意することが大切です。部下のほうからも、自分がどんな働き方をしたいのか、今後どんなペースで、どこまでのポジションを目指すのかなどを伝えておくことで、思いの行き違いが防げます」