毎晩深夜に帰宅する夫に対して不満が募り、「何度も離婚を考えた」という柚木麻子さん。妊娠前の自由な時間を「貴族の遊びのようだった」とも。夫にやさしくできない本当の理由は、何なのでしょうか。今回も柚木節がさく裂します!

シャドーボクシングで空回り

 みなさん、こんにちは。友人たちから近ごろ「コロンボ」と言われている柚木麻子です

 「コロンボ」というのは、世界で最も有名な刑事ドラマ、『刑事コロンボ』のこと。コロンボは「ウチのカミさんがね……」と、しょっちゅう妻の話をしていました。ところが、この「カミさん」、ドラマに全然登場せず誰もその姿を見たことがない。

 私も、友達との会話はもちろん、こういうインタビューの中でも「ウチの夫は……」と夫話をよくするのですよ。この連載でも以前、夫の悪口を書き並べたことがあります。ところが、この夫の姿を誰も見たことがない。一体いるのかいないのか。というわけで、「おまえはコロンボだ」ということになりました。

夫婦関係について話す柚木麻子さん

 いますよ、夫。その姿を誰も見たことがないのは、連日仕事で帰りが遅いため、普通の人が活動している時間帯に外を歩いていないからです。私は出産のときも一人でしたし、子育てもワンオペ。腹が立つ、腹が立つ。でも、怒りをぶつける相手の姿が見えないので、シャドーボクシングをしているがごとき状態になる。一人で腹を立てて、一人で空回りして、一人で疲れてる、みたいな。

 離婚を考えたことは数えきれません。この状態をなんとか改善したくて、雑誌や本を読みあさり、ありとあらゆる情報も集めました。けれど、ますます納得いかないんです。