都合のいいキャラクターを演じる必要はない

 出産後に書いた小説『マジカルグランマ』のなかで、私は、シニア俳優としてデビューする正子という女性を描きました。正子が演じたのは、いつも優しくて、会えばお小遣いをたっぷりくれるキュートなおばあちゃん。でもこれは、若い人にとって都合のいいおばあちゃんなんです。

 よく考えると、誰かにとって都合のよいキャラクターを演じてしまうことは、私たちの日常にもあると思います

 例えば、私はデビューしたてのころ、仲良しの作家さんとよく一緒に遊んでいたんですが、ある編集者の方から「作家はプライベートの充実なんて求めるな、身を削って書くものだ」と言われました。でもこれって、単なる理想像でしかない。いわば「マジカル作家」ですよね。

 ではワーママは? 「仕事も育児も抜かりなく、外見もきれいに」という「マジカルワーママ」像みたいなものがないでしょうか。

 女性タレントがよく「かわいいおばあちゃんになりたい」と口にしますよね。でも、お年寄りがかわいくないと生きていけない社会なんて、おかしいでしょう。ワーママだって、仕事も育児もおしゃれも完璧にこなす「マジカルワーママ」を目指したり、演じたりする必要はないと思うんです