育児書を読んでみたけれど…

 子どもが生まれる前は育児書も何冊か読みましたが、正直、「めんどくせえ!」って思いました。例えば、布団は毎日干す、シーツは毎日替えるのが前提になってたりするんです。働いてたら、いつ布団干せるんですか? 平日は無理ですよね? 私みたいに同時進行でいろいろできない人にとっては、難しくて仕方ありません。

 スマホとの付き合い方も、うまくできてません。以前なら執筆中はスマホの電源を切って、ネットを完全に遮断して原稿を書いていました。でも今は、保育園からいつ連絡が入るか分からない。電源切ってる間に「今、プールで溺れました」という連絡が入ってたら……そう思うと電源切るわけにはいかない。

 で、電源が入っていると、LINEにいろいろ連絡が来るから、ついついチェックしてニヤニヤしちゃう。ついに私、スマホのメモ機能で小説を書くという、とんでもないスキルを身に付けてしまいました。「この画面の横幅だと1行当たり〇文字入るから……」ってカウントしたりして。

 じゃあその分、良いママかというと、こちらも実に疑わしい。子どもを6時にお迎えにいって、ドタバタと9時ごろまでに寝かしつけるだけで精いっぱい。中途半端にしかできない、そんな自分に満足できてないんですよね。だから疲れて帰ってきた夫をつかまえて、ギャーギャーケンカをふっかける。家事の分担だって、ちっともうまくできていません。ダメだな、私。

 それにしても、メディアに登場するワーママってどうしてちゃんと両立できている人ばかりなんでしょうかね。多様性なさすぎじゃありませんか?

 少し前にテレビで、ある先輩作家――私たちの世界の輝ける星のような方ですよ――の1日に密着取材した番組を見たんですけど、私、倒れそうになりました。

 家事も執筆もしっかりなさって、お部屋は片づいていて、すてきなお洋服を着ていて、子どもには常に笑顔。しかも私の50倍くらい本が売れているんです。ぎゃあああああ。

 この先輩はちっとも悪くないんです。ただ、とびきり優秀な方で、私とはできが違う。私は私、と思えればいいんですけど、これがなかなか難しい。なぜなら、仕事にはしっかり取り組んでしかるべき成果を上げ、その一方で家事も子育てもきちんとこなす―――こんな「理想のワーママ像」みたいなものに、私自身がどこかで縛られているからなんです